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日本人クルー紹介: 西村一広 …

日本人クルー紹介: 西村一広 氏 Vol. 01

2021.07.19

日本人クルー紹介:2001年のホクレアとの出会いときっかけに、2007年のホクレア日本航海をサポートをされてきた西村一広氏。「アメリカズカップ」と呼ばれるヨットレースが彼をホクレアと結びつけた背景とは?

日本人クルー紹介:2001年のホクレアとの出会いときっかけに、2007年のホクレア日本航海をサポートをされてきた西村一広氏。「アメリカズカップ」と呼ばれるヨットレースが彼をホクレアと結びつけた背景とは?

西村 一広 氏 プロフィール

プロセーラー/東京海洋大学講師(海洋工学部)                                                有限会社コンパスコース 代表取締役/一般社団法人うみすばる 代表理事 
https://compasscourse.jp/

2001年のホクレアとの出会いときっかけに、2007年のホクレア日本航海をサポート。その後、2009年パルミラ環礁航海の復路にサポート艇カマヘレクルーとして、そして、2008年〜2013年には断続的にハワイ周辺海域でトレーニングに加わり、2015年ホクレア世界一周航海のインド洋横 断レグにクルーとして参加。

アメリカズカップと日本チームの敗因

世界のレーシングヨット・セーラーが勝利することを夢見る「アメリカズカップ」と呼ばれるヨットレースがあります。アメリカズカップとはその優勝杯の名前で、その歴史は1851年の英国ロンドン万博を記念して開催された、ヴィクトリア女王下賜のカップ争奪ヨットレースにさかのぼります。米国ニューヨークから遠征したアメリカ号が優勝してそのカップを米国に持ち帰り、そのカップはアメリカ号のカップ、アメリカズカップと呼ばれるようになりました。                                                               それ以降、各国のヨットクラブの間でアメリカズカップ争奪戦が行われるようになりましたが、このカップはあらゆるスポーツの国際試合で最も古い優勝杯として知られています。

このカップ争奪戦に挑戦するには、原則的にそのヨットクラブのある国で設計され、建造されたヨットに、その国のセーラーが乗ってレースをしなければならないと決めれられています。つまり、ハードもソフトも、それぞれの国が、それぞれが誇るセーリング文化と海洋文化をぶつけ合う、平和だけど、とても真剣なセーリング競争です。

アメリカズアップに、ぼくも日本チームの一員として1991年から挑戦しました。                                  しかしいいところまで行っても、どうしても勝つことはできませんでした。                              2000年のニュージーランドでのカップ争奪戦にも負けた後、自分たち日本代表の敗因を深く考えてみました。

そして見えてきたことは、アメリカズカップに勝つ国は、それぞれのセーラーが、それぞれのボートデザイナーが、それぞれのボートビルダーが、全員が、自分の国のセーリング文化や海洋文化に深い誇りを持っていることでした。

一方、日本の我々は、ヨットの設計も建造もレースのやり方も、外国人から学んだり真似したりするばかり。これについては、日本人は優秀ですから、すぐに互角になることができます。しかし小手先の技術で肩を並べるだけでは、横並びまでは行っても、勝つことはできないことに気づいていませんでした。

「アメリカズカップには、人真似しているばかりでは決して勝てない。」

自分の祖先のことを知り、その祖先たちが育んでいた海洋文化、セーリング文化を知り、そのことに矜持を持って初めて、アメリカズカップに挑戦するに相応しいセーラーになれるのだと理解しました。自分が生まれた国独自のセーリング文化と海洋文化、そしてその歴史を深く知ることもなく、ぼくはアメリカズカップに勝とうとしていたのです。

そのことに気づいて以来、日本の海洋文化について勉強を始めました。                                        日本列島に住んでいた祖先が、1万年以上も前からセーリングしていた可能性があることを知って驚きました。また、世界最古の造船用石器が日本の九州で出土していることも知って驚きました。

古い歴史を持つ沖縄のセーリング漁船サバニの乗り方を覚えたり、明治時代初期まで存在した日本起源の帆船である弁財船のレプリカで実際にセーリングしたり、わずか40年前まで東京湾に数千隻もあった小型セーリング漁船の実際の乗り方を元漁師さんに教わりに行ったりするようになりました。

今から150年前まで日本の海運を担ってきた日本起源の弁財船(べざいぶね)のレプリカ〈みちのく丸〉にも乗せてもらい、実際にステアリングしてセーリングした。全長105ft、排水量100トン、マスト高さ92ft
Photo by Kazi  写真提供:舵社
わずか40年前まで、東京湾の漁業で中心的役割を担って活躍していた日本起源のセーリング漁船「べか舟」。そのセーリング技術を次世代日本人に伝えたいと思って元漁師さんの元に通い、特訓を受けた
Photo by Kazi 写真提供/舵社

沖縄に伝わる伝統セーリング艇、サバニ。日本のヨットセーラーを中心にしたチームを組んで、沖縄で競技会に出たり、子どもたちを乗せるなどの活動を続けている。

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