伝統航海カヌー「ホクレア」について

About
Hōkūle‘a

allwahawaii

復活を遂げたハワイの伝統航海カヌー

ハワイの伝統航海カヌー「ホクレア」は、コンパスなどの計器を一切使うことなく、星や太陽の動き、波や風の変化など、自然が与えてくれるヒントのみを使う伝統航海術による双胴船です。一度は失われたこの伝統文化が1975年に復活を遂げ、これまで40年以上に渡り、ハワイから太平洋の島々、日本、そして世界一周航海など、延べ約30万キロ、地球を約7周するほどの距離を航海してきました。ホクレアは、ハワイの伝統文化の象徴であり、ハワイの人々の誇りでもあります。

星の航海術

Star
Navigation

月や太陽、星などのサインを読む星の航海術

ハワイに最初の人類が辿り着いたのは、今から約千年以上ほど昔のことだといわれています。コンパスも海図もない時代に、人々は一体どのようにして広大な海を渡り、新たな島々を見出していったのでしょうか?

古代の人々は、月や太陽、星といった天体の動きや、風の変化、雲の動き、海のうねりのパターン、海鳥の様子など、自然が与えてくるサインを読み取り、水平線の彼方の島を見出していったと言われています。「星の航海術」とも呼ばれる、そうした伝統航海の手法は、ハワイを含むポリネシア海域では一度失われかけていましたが、1976年、ホクレアの航海をきっかけに現代に蘇りました。

海の上にいる自分が中心。スターコンパス

大海原で、航海カヌーに乗っていると想像してみてください。周りは360度、水平線が広がっています。海の上にいる自分自身が巨大なコンパスの中心、そして水平線がコンパスの外枠になります。水平線のどこから太陽や星が昇り、そして沈んでいくのかが、コンパスの目盛りになります。星の動きを前もって記憶しておくことで、自分たちがどこへ向かって進んでいるのかを知ることができるのです。こうして星を使って作るコンパスを、ハワイでは「スター コンパス」とよんでいます。

星を羅針盤に

たとえば、オリオン座の三ツ星は、いつも真東からのぼって、真西にしずんでいくので、東や西を知るサインになります。星が空高く昇ってしまうと方角のサインにできなくなるので、天空全体の星の配置を学び、次々と昇る星がどこから昇り、どこへ沈むのかを覚えていきます。身体を計器として使いながら、星の高度を測り、自分たちの緯度を知ることもできます。

星が見えない時は?

星を使ったスターコンパスは、自分たちの進んで行く先を知るのに、とても頼りになる方法ですが、当然、星が見えない昼間は使うことができません。そして、夜の間でも、雲がかかっていたり、雨が降っていたりしていれば、使うことができません。星の見えない夜や日中は、一体、何をヒントに使うことができるでしょうか?

日中、まず頼りになるのは、太陽の動きです。太陽は、春分、秋分にはほぼ真東から昇り、真西へと沈んで行きます。春分から夏至に向かって太陽の昇る位置は北側へと動き、秋分から冬至に向けては南側に向かって動きます。そうした太陽の動きを頭に入れておくことで、日の出や日の入りの際に、方角を知る大きなヒントが得られます。



海のうねりや風の変化など、あらゆる自然の変化を読み取り進む方向を見出す?

太陽が高く昇ってしまった日中や、空が曇って星の見えない夜には、海のうねりのパターンが方角を見出す大きなヒントになります。日の出、日の入りの際に、海のうねりがどの方角から来ているかを見出し、日中はそのパターンを頼りに方角を定めていきます。その他、風の変化、雲の様子、空の色、海鳥の動きなど、ありとあらゆる自然の変化を読み取りながら、進む方角を見出すヒントにしていきます。

航海術師は、五感すべて、時には第六感も使って、一日に数千をこえる自然現象を観察し、それらを統合しながら、行く先を見出していきます。海のうねりの読み方などは、大海原での経験を積んで学ぶしかなく、まさに一生かけて学ぶ術だと言われています。



見えるもの、聞こえるもの、
肌で感じるあたたかさ、つめたさ、
風のにおいやしめっぽさ・・・。
海と空には、いろんなヒントがつまってる。
どんなサインも見逃さないように、
からだぜんぶをつかってごらん。

絵本『星と海と旅するカヌー』(きみどり工房)より

その他の航海カヌー紹介

Rebirth of
Traditional Polynesian Voyaging



ホクレアの成功を皮切りに復興した他の航海カヌー

1976年、ハワイからタヒチに向けたホクレア初航海の成功は、ハワイのみならず、太平洋全域の伝統航海カヌー文化の復興の大きなきっかけとなりました。

1993年、アラスカから寄贈された木を使い、できるかぎり伝統的な素材を使って建造された「ハワイロア」を皮切りに、ハワイ各島では次々と航海カヌーが誕生。ハワイ島、マウイ島、カウアイ島、それぞれの場所でコミュニティの力に支えられた航海カヌーは、伝統航海を通じた学びの場として活躍しています。

さらに、タヒチ、サモア、クック諸島、フィジー、ニュージーランドといったポリネシアの島々でも新たな航海カヌーが誕生しました。2007年には、ハワイで建造された「アリンガノマイス」がミクロネシア・サタワル島まで航海し、現地コミュニティに寄贈されました。

現在、太平洋諸島には、20艇をこえる航海カヌーが誕生しています。ホクレアをきっかけに、太平洋には、大いなる”ʻOhana Wa’a (カヌーファミリー)”が築かれ、伝統航海を通じたコミュニティの新たなつながりが生まれています。

姉妹カヌー

Sister Canoe
“Hikianalia”



 

ホクレアの姉妹カヌー、「ヒキアナリア」

ヒキアナリアとは真珠星(スピカ)のハワイ語名で、ハワイではホクレア星(喜びの星/アークトゥールス)と共に昇ってきます。この二つの星はハワイ諸島の緯度では、一緒に水平線から現れるので姉妹星と呼ばれています。ヒキアナリアは2014年に始まったマラマホヌア世界一周航海でホクレアと一緒に太平洋を航海した姉妹カヌーです。2015年にはいったんホクレアと離れハワイへと帰ってきましたが、2017年にはホクレアとタヒチで合流し一緒にハワイへと戻って来ました。ヒキアナリアは最新のエコテクノロジーと伝統航海の継承を併せ持っています。

世界航海での“Mālama Honua(マラマホヌア)” 「地球をいたわる」というミッションをサポートするデザインがされています。
ヒキアナリアは世界航海のために、アオテアロア(ニュージーランド)のソルトハウス・ボートビルダーズで建造されました。オケアノスーファンデーション・オブ・ザ・シーが企画した、パシフィックヴォヤージャーズの7隻の“ワカモアナ”、“海のカヌー”と同じモールド(型)で建造されています。アオテアロアからハワイまでの回航は、1985年にホクレアがアオテアロアまで航海したときに築き上げ、今もなお続いている、マオリコミュニティとの関係をもう一度盛りあげることになりました。

ポリネシア航海協会「PVS」について

About
Polynesian Voyaging
Society


ハワイの伝統航海術を継承し、世界中を航海しながら、
環境保全や文化伝承を目的に活動しています。

ポリネシア航海協会は、ハワイの伝統航海術を継承し、その技術を用いて世界中を航海しながら環境保全や文化伝承を目的に活動する非営利団体。歴史画家であり郷土研究家のハーブ・カネ氏、ウォーターマンとして知られるトミー・ホームズ氏、人類学者ベン・フィニー氏らにより、1973年に設立されました。

コンパスなどの計器を一切使わず、星や太陽の動き、波や風の変化などによるナビゲーションをもとに海を渡る伝統航海術を用いて、航海カヌーにより1976年にハワイ- タヒチ間の航海に成功し、ハワイアンの先祖たちがポリネシアから偶然ハワイに漂流したという説を覆し、彼らが航路を理解し意図的にハワイにたどり着いたことを証明しました。その後、これまで50年近くに渡り世界中の海を航海し続けています。

ポリネシア航海協会は、伝統航海術の芸術と科学、そして探求する心を継承し、体験型の教育プログラムを通して、自然、文化に敬意をはらい、互いにいたわり合う大切さを次世代に伝えることを使命としています。自然の力だけを使った伝統航海を通じて、地球という” 島” への敬意やいたわりの心を育み、分かち合い、学び合い、グローバルな関係を築くことで、自然と調和のとれた持続可能な世界の実現を目指しています。

ポリネシア航海協会 環太平洋航海サイト

ポリネシア航海協会(PVS)は、今後6年間にわたり太平洋一周の旅に出ます。私たちの目標は2026年までに、次世代1,000万人の「アイランド・アース・ナビゲーター」を育成することです。

http://www.hokulea.com/waamoana/voyage-vision/