一覧へ戻る

He Wa'a He Moku…

He Wa’a He Moku, He Moku He Wa’a : カヌーは島で島はカヌー 

2024.02.13

" You can never believe the beauty of island Earth until you see it in its entirety from space." 「この地球という島の美しさは、宇宙からその全体を見ないとわからない。」

" You can never believe the beauty of island Earth until you see it in its entirety from space." 「この地球という島の美しさは、宇宙からその全体を見ないとわからない。」

” You can never believe the beauty of island Earth until you see it in its entirety from space.” 

「この地球という島の美しさは、宇宙からその全体を見ないとわからない。」 

これは1992年ハワイ出身の宇宙飛行士レイシー・ビーチが宇宙の旅から故郷ハワイへと帰還した後、ホクレアのマスター・ナビゲーター(伝統航海師)ナイノア・トンプソンに伝えた言葉である。 

レイシーは彼の故郷であるハワイを、そしてハワイアンの誇りである伝統航海カヌーのホクレアをこよなく愛していた。彼が初めて宇宙船から地球を目にしたとき即座に、宇宙に浮かぶ地球、太平洋のほぼ中心に位置するハワイ諸島、大海原を航海するホクレアにつながりを見出した。 

レイシーはナイノアにこう続けた。 

“How can you take care of something that you don’t understand right, Hōkūleʻa needs to know the earth, the earth needs to know Hōkūleʻa.”

「よく知りもしないものを、どうやっていたわることができる?ホクレアは地球を、地球はホクレアを知る必要がある。」 

“Hawaiʻi needs to become the laboratory and the school to help us relearn how to live well on islands and that would be Hawaiʻi’s gift to the earth, it would be about peace.” So that was the seed that he planted in our heads about responsibility.  

「ハワイは、地球という『島』で私たちがどのように良い生き方ができるのかを学び直す手助けをする実験室、そして学校になる必要がある。それがハワイから地球への『平和』というギフトなんだ。」これはレイシーが私たちの頭の中に植えた「責任」という種だ。 ーナイノア・トンプソンのスピーチより引用ー 

宇宙船コロンビアからレイシーが撮影したハワイ島のマウナケアと航海カヌーを作る伝統的な手斧。マウナケアは古代ハワイアンが手斧を作っていた特別な場所だった。

それから22年後、ホクレアはその種から大きく育ったビジョンと共に2014年から2017年の3年を費やし “Mālama Honua” (マーラマ = いたわる、大切にする/ホヌア = 地球) 「地球をいたわる」というメッセージを掲げ世界一周航海を成し遂げた。 

私自身もこの航海のいくつかのレグ(区間)に参加し、それぞれの寄港地で文化も人種も様々な人々と出会い、触れあうことができた。その体験の中で、私たちは違うところよりも似ているところの方が多いということを強く感じた。ハワイの人たちが持っている「Aloha」の精神、私の故郷である沖縄の「イチャリバチョーデー」(出逢えば兄弟だ)の精神はもしかしたら全世界共通なのではと感じる場面がいくつもあった。

モーリシャス島から南アフリカのケープタウンへの航海の途中、嵐を避けるために避難したモザンビークのマプト湾内で錨を引き揚げられずに2時間も立往生していた。すると、どこからともなく白人の男性が操船する白いモーターボートがやって来て私達を助けてくれた。彼の船で錨を引き揚げてくれたのだ。その白い船がカヌーの周りをぐるっと旋回する様子は、Manu o Kū(マヌ・オ・クー)という航海カヌーに島が近いことを知らせ導いてくれる白い鳥のようだった。

モザンビークのマプト湾内で、錨を引き揚げるのに悪戦苦闘

やっとの思いで錨を引き上げて南アフリカの最初の寄港地であるリーチャーズベイに入港した直後、現地に住む日本人の男性が私に歩み寄り日本語で話しかけてきた。この方はオカワさんといって、2007年の日本航海で横浜に寄港したホクレアと初めて出会い、それからずっと動向を追っていたそうだ。ホクレアが海外勤務先の南アフリカに航海することを知り、わざわざ隣町から何時間もかけて出向いてくれた。そしてホクレアのために何かがしたいからとカヌーのデッキを隅から隅までタワシで磨いたり、食料買出しの手伝い等、南アフリカでは大変お世話になった。 

ハワイから180度地球の反対側で、見ず知らずの困っている私達を無償で助けてくれた白い船に乗った男性や、ホクレアのためにデッキを磨いてくれたオカワさんとの出会いに私はとても驚いた。悪いニュースにばかり目を向けてしまうこの世の中だが、世界にはまだたくさんの優しさが残っている。希望の光が見えた体験だった。 

上に挙げたのはほんの一部で世界中の寄港地の先々でホクレアの周りでは似たようなことが起こっていた。ホクレアに宿っているマナが同じ波動を持つ人達を引き寄せるのだろうか。ホクレアの世界一周航海は世界中の多くの人々に支えられた。航海した先々で私たちが助けを必要とする時いつも誰かが現れ助けてくれた。この事実があったからこそ、ホクレアが無事にハワイへと帰還することができたのだろう。 

南アフリカのダーバンにて。地元の子供達が Hōkūleʻa での舵とりを体験中。 
地元セーリングクラブの子供たちが Hōkūleʻaを訪問。

ハワイ語で”He wa’a he moku, he moku he wa’a” 「カヌーは島で島はカヌー」ということわざがある。大海原に浮かぶ一艘のカヌーと、周りを海で囲まれた島での生活はつながっている、カヌーは島の縮図であるといったような意味だ。カヌーでも島でも資源は限られている。だからこそ分け合うことは当たり前で、お互いを家族のようにいたわり、相手を思い行動し、自然と共に生きていく。カヌーでできることが島でもできるならば、この地球を宇宙に浮かぶ一つの島とだと考えて行動し生きていくことも不可能ではない。このカヌーでの体験は人としてそういう生き方ができるのだと信じさせてくれた。 

この世界一周航海でホクレアを助けてくれた人達にまた会いたい。会って彼らのために何かがしたいと強く思う。でも、もしかしたらもう二度と会うことはできないかもしれない。遠く離れていても私が彼らに恩返しできるとするなら、その受けた優しさを別の誰かに優しさで返していくこと。それが巡りめぐって彼らに届いていくことを信じて。結局のところ日々の優しさの積み重ねが世界の平和につながることを、オカワさんや、Manu o Kūのような白い船に乗って現れた男性、そして寄港地の先々で出会った人々に教えられた。 

南アフリカのダーバンにて地元の学校を訪問。ハワイからはカメハメハスクールの生徒達がフラを踊り、地元の生徒はアフリカンダンスを披露し文化交流。ナイノアはこの光景を見て、” this is the world peace look like”  「これを世界平和と呼ぶのだろう」と言った

新型コロナのパンデミックに世界中が脅かされていた状況の中で、Mālama Honua 「地球をいたわる」という言葉を聞いても、いったい何をしたらいいかわからないという人達がいても仕方のないことだと思う。でも、こんな時だからこそ、自分自身と向き合い、自身をいたわり、そして隣にいる誰かをいたわる。それが家族や友達、あるいは偶然に出会った人だとしても、優しさ、思いやりを持って接していくこと。それが、今、この瞬間からでも私達にできる「Mālama Honua」の最初の一歩なのかもしれない。 

“The canoe, to me, it is a way of encouraging adults and youth alike to follow their dreams and to take care of this precious earth and to teach them ways in which they can take care of it because individually we can do it and together we can do more,” says Veach” 

「私にとって、カヌーとは大人でも子供でも同じように夢を追えること、そして、たった一つの地球をいたわることを勇気づける方法であり、彼らにそれができるということを教え導くもの。なぜならば、私たち一人ひとりができることを皆が一つになってやればより多くのことができるのだから。」 レイシー・ビーチ 

現生人類の発祥の地である南アフリカMossel Bay(マッスルベイ)の洞窟の沖を航行中の Hōkūleʻa。世界で最も若い文化であるハワイアンの伝統航海カヌーが世界最古の文化発祥の地を訪れた。 

LATEST

伝統航海の広がりWorld Sailing

すべて見る

環太平洋航海2022 最新情報Pacific Rim Voyage 2022

すべて見る

お知らせNews

すべて見る