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環太平洋を巡る旅 モアナヌイアケア航海 レグ9 カリフォルニア西海岸への航海を振り返って②

2024.02.09

Aloha!ホクレアクルーのTamikoです。 2023年10月25日から​​​​​​11月15日までハワイ伝統航海カヌーホクレアに乗船し、モアナヌイアケア航海レグ9の区間である、カリフォルニア西海岸のマリーナデルレイ 〜ニューポート〜デイナポイント〜サンディエゴへと航海してきました。その体験の続きを報告させていただきます。最初の部分は「環太平洋を巡る旅 モアナヌイアケア航海 レグ9 カリフォルニア西海岸への航海を振り返って①」をご覧ください。

Aloha!ホクレアクルーのTamikoです。 2023年10月25日から​​​​​​11月15日までハワイ伝統航海カヌーホクレアに乗船し、モアナヌイアケア航海レグ9の区間である、カリフォルニア西海岸のマリーナデルレイ 〜ニューポート〜デイナポイント〜サンディエゴへと航海してきました。その体験の続きを報告させていただきます。最初の部分は「環太平洋を巡る旅 モアナヌイアケア航海 レグ9 カリフォルニア西海岸への航海を振り返って①」をご覧ください。

環太平洋を巡る旅 モアナヌイアケア航海 レグ9 カリフォルニア西海岸への航海を振り返って①の続きです。

今がステップアップのとき

カヌーや次世代クルー、そして、私の故郷である沖縄の子供達のためにステップアップしなければ。。。そう考えるようになったのは、2022年の10月に私の最も尊敬しているキャプテンの一人、マウイ島ラハイナ出身のアーチー・カレパとクルー達と共にホクレアでハワイ島コナへトレーニング航海したことが大きなきっかけになったと思います。アーチーは常にカヌーのために、クルーのために、コミュニティのためにステップアップすることの大切さを教えてくれます。

このトレーニング航海で、アーチーは私に、彼と共同でホクレアのキャプテンをする機会を与えてくれました。どのクルーにキャプテンを任せても安全に航海できるように。。。そうやってアーチーは全てのクルーにクレアナを与えて、次のレベルへとステップアップするのを後押してくれるのです。そして、アーチーがコミュニティの人達に温かく、謙虚に接する姿を目の当たりにし、カヌーのキャプテンでありながら、コミュニティリーダーとして、人々に勇気を与えていく彼の存在に深く感動させられました。

このアーチーとのトレーニング航海中、私の中で何かが変わっていくのを感じました。それは、誰かの背中についていくだけだった私のマインドセットが、リーダーシップ、キャプテンとしてのクリアナへとシフトしていく瞬間だったのかもしれません。

私がホクレアで航海をする大きな目的である、私の地元沖縄の子供達に伝統航海を体験させること、船と子供達を安全に航海させること、ハワイの島々や人々への恩返しとして、次世代クルーへ航海カヌーを引き継いで行くためにも、キャプテン、そしてリーダーとしてステップアップしなければと思い始めました。それまではずっと、私がその立場になるなんて恐れ多いと感じていましたが、それは甘えなんだと気づきました。そして、ステップアップするためには今までと同じことをしていては、何も変わらないということにも。

自分を信じる力

そして2023年、私は当初ハワイにいながらモアナヌイアケア航海をサポートしていこうと考えていました。私はもともと仕事でカタマランセイルボートのキャプテンとして働いているのですが、自分に足りない、自分を信じる力、「自信」をつけるために、その年の始めから別のカタマランの新しい仕事に就いて、ハワイにいながら今までとは違う船と場所で船乗りとしての技術、シーマンシップを学び直すことにしました。今年前半は新しい仕事のトレーニング、キャプテンとしてのスキルを上げて自信がつくまでは、モアナヌイアケア航海には参加しないと言う決断をしました。

もちろん、そう決めるまでに迷いがなかったわけではありません。航海に参加する機会を与えてもらっているのに、矛盾している?これでいいのか?と自問自答、心がもやもやすることもありました。それでも今後の航海のために、この決断が良かったと言えるように自分を信じて、今自分がやるべきことを一つずつやるしかないと自分に言い聞かせてやってきました。

そして、新しい船でのトレーニングも終わり、少しずつ自分に自信をつけてきた矢先、8月、マウイ島ラハイナで火事が起こったのです。ハワイ中の人々、ハワイを故郷とする人々、世界中のハワイを愛する人々に衝撃が走りました。ラハイナにはアーチーや、ホクレアの伝説的クルーであるアンクル・スネーク、マウイ島の航海カヌー、Mo’okiha O Pi’ilaniのキャプテンである、ティミ・テテ・ギリアム、その他にも多くのカヌーでつながるオハナ達が住んでいます。その中には火事で全てを失ってしまった人達もいました。

ハワイ内外からラハイナをサポートするための救援物資が集まり、ヒキアナリアも救援物資を届けるために、マウイ島へと航海しました。その救援物資を届ける2回目の航海でヒキアナリアのキャプテンをできるか?とナイノアに聞かれたのです。ヒキアナリアは出入港の際にキャプテンがエンジンを使って操船し離岸、着岸します。どの船の場合もそうですが、事故が起こりやすく、危険も伴うのが出入港時です。私はヒキアナリアで航海をしたことはありますが自分が操船してドックから離岸、着岸した経験はこの時点で一度もありませんでした。

でも、これを理由にできないという選択肢はもう私にはありませんでした。ラハイナのために、やるしかない、私の職場で得た経験と、クルー皆で力を合わせれば、出入港も含めて、ヒキアナリアでマウイ島へ安全に航海することはできる、と判断しました。数年前の自信のない私にはできなかった判断かもしれません。このマウイ島への航海も準備の段階から、オアフ島に帰ってから後片付けまで(今思えば笑ってしまうくらい)ハプニングも起こりつつ、チャレンジの多い航海ではありましたが、皆で助け合いながら、無事にマウイ島へ物資を届け、帰ってくることができました。一緒に航海してくれた皆んなには本当に感謝、感謝です。

アーチーとのトレーニング航海と、マウイ島への救援物資を届ける航海で得た、皆で強みを活かしあい、弱みを補いあって、皆の力で目的地へと到達することができたという体験は、レグ9航海にキャプテンとして参加することに不安や躊躇もあった私の背中を強く押してくれました。甘えたままでいいのか?今ここでこのクレアナを引き受けなければ、いつ?誰が?と考えた時に、もうやるしかないと。与えられた機会に感謝して、あとは自分のベストを尽くすだけだと。

自分自身を再確認

2023年は自分自身に歯痒い思いをしながらも、少しは成長できた一年だったかなと思います。まだまだ学ぶことは山のようにありますが、やっと、自分自身のことを恥じることなく「Sailor」と呼べるようになったかな。たくさん失敗もして、泣きべそをかくこともありましたが、それでも確かなことは、私は航海を通して海と繋がっていきたいということ。ホクレアの航海でも、仕事でも大海原へ出て、自然に注意を向けて、敬意を払い、観察し、波と風の声を聞いて、肌で感じて、自然と対話しながら目的地へと航海していくことが、たまらなく好きなんだと再確認できました。そして、それを次世代へ伝えていくことが自分のクレアナなんだということも。

私を常に支えてくれている家族、この航海で一緒に航海した全てのクルー、それぞれの寄港地で出会った全ての人々、起こった全ての出来事に心から感謝します。おかげさまで、皆で助け合いながら無事にレグ9最終目的地へと辿り着くことができました。

今回の航海で伝えていくことの大切さにも改めて気付かされました。読んでくださった方々の中で誰か一人でも、何かの一歩を踏み出すきっかけになれればという願いを込めて書きました。長い文章になりましたが、最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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