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ホクレアが教えてくれたこと: …

ホクレアが教えてくれたこと: 池田恭子氏 Vol. 05

2021.07.03

ハワイに暮らし、航海カヌーに関わりながら、「健やかさ(sense of wellbeing)」そしてハワイを通して見えてくるこれからの生き方について発信をしている、池田恭子氏。2007年航海直後に書いたホクレア航海回想録をお届けします。

ハワイに暮らし、航海カヌーに関わりながら、「健やかさ(sense of wellbeing)」そしてハワイを通して見えてくるこれからの生き方について発信をしている、池田恭子氏。2007年航海直後に書いたホクレア航海回想録をお届けします。

池田恭子氏 プロフィール

海の素人ではあるが、2007年のホクレア日本航海に通訳・教育プログラム担当で乗船。その経験を経て、「わたしたちの健やかさはどこからくるのか」という問いをもちながら、日本とハワイをつなぐ学びのプログラムを共創する仕事に携わる。現在はカウアイ島で子育てをしながら、大学で国際プログラムのコーディネーターの仕事をする。カウアイの航海カヌー「ナマホエ」にも家族ぐるみで関わっている。ハワイに暮らし、航海カヌーに関わりながら、「健やかさ(sense of wellbeing)」そしてハワイを通して見えてくるこれからの生き方について発信をしている。

この記事は2007年航海直後に書いたホクレア航海回想録から抜粋。

共に生きていくために

長い間わからなかったこと。それは、ホクレアのクルーがなぜ、決してカヌーを見たいという人を拒まないのか。なぜ、航海の前に行う祈りの儀式の輪の中に、その場に居合わせた見ず知らずの人を自然に迎え入れることができるのだろうか。 「彼らのそのようなあり方、とはどこからくるのだろうか?」 航海が終わりに近づいたある夜、わたしは二人のナビゲーターにこの質問をなげかけた。二人は声をそろえてこう言った。“That is the only way to live. 「それ以外に共に生きていく方法はないから。」” 他者、異なるものを関係性の中に取り込んでいくこと以外にカヌーの上で生きていく方法はない、ということだろうか。確かに、出航前の神聖な儀式の輪の中に迎え入れられ、手を繋ぎ、祈りを共に捧げるという場に居合わせた人の表情には、それまでにはなかった何かが生まれていことには気づいていた。それが何なのかは、言葉ではなかなか言い表せないが、それは、「途絶」していたつながり、または、「あきらめかけていた」つながりが取り戻された瞬間に生まれた希望なのかもしれない。驚き、そして感動にも似たその心の動きが、迎え入れられた人々の顔にはあった。その表情には、人間の命の輝きがあった。

カヌーという小さな空間で航海を続けているベテラン航海士たちは、この命の輝きをたくさんみてきたに違いない。人が人を受け入れるとき、そして、人が人に受け入れられるとき。そこに生まれるエネルギーを彼らは感じてきたに違いない。だからこそ、確信をもって「それ以外に共に生きていく方法はないから。」と言えたのだろう。

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