クアロアランチ・ハワイの「マラマ体験ツアー」

2022.09.12

古代から引き継がれてきた4,000エーカーの私有自然保護区を維持しながら、持続可能な観光の実現に向けて様々な取り組みを行っているクアロアランチ・ハワイ(以下クアロア)は、コロナ禍にマラマな新しいツアー「マラマ体験ツアー」を開始しました。

マラマ体験ツアーは、オアフ島北東部に位置するクアロアの敷地内に現存するアフプアア3区画(クアロア、ハキプウ、カアアヴァ)の仕組みや持続可能な生活の知恵、ハワイアンの食文化について体験しながら学ぶツアーです。アフプアアとは、ハワイアンの人々が共同生活をしていた頃に、村ごとに自然資源が平等に分配されるよう山頂から海までの土地を分けた土地区画のことです。アフプアアでは、雨が山の頂上から滝、そして小川となって、低地に流れ込み、タロイモ畑を潤し、周辺では野菜が育ち果物が実という地理を活用して生活をしていました。マラマ体験ツアーでは、ハワイの伝統的なハレ(草の小屋)の葺き替えや、カロ(タロイモ)の植え付けや収穫、掃除のお手伝い、ラアウ・ラパアウ(薬草)の手入れなどを体験しながら、古代の人々の知恵やサステナブルな暮らしについて学びます。タロイモ畑では植物の成長に合わせた作業を行います。

タロイモ畑は神聖な場所

クアロアのビジターセンターから車で10分ほどのパハロナ・アグリカルチャーセンターに移動すると、タロイモ畑が広がっています。ハワイ語でロイと呼ばれるタロイモ畑は、ハワイアンの祖先とも言われ神聖な場所。そのためロイに入る前に参加者はオリ(祈り)を唱えます。の後、目の前にそびえる山脈から低地まで約25年かけて水が降りてくることや、800年前に作られたモリイフィッシュポンドは、エネルギーを使わないサステナブルな養魚池の仕組みについて学びます。

ロイの管理をしているジェイクさんによると、コロナ禍の経費削減によって、土の表面の乾燥を防ぐために根本を覆っていたビニールカバーを無料で入手できるヤシの葉に変えてみたそうです。葉の間にタロイモを植え、その下には日差しを遮って温度を低く保つために新聞紙を敷いてみると、土の表面の乾燥を防ぐだけではなく、雑草も生えにくくなり、新聞紙は自然に還るため撤去作業も不要になったそうで、サステナブル農法は日々進化していることも教えてくれました。

タロイモの植え付けに挑戦

ロイで体験する作業は、タロイモの成長期に合わせて行われます。今回の作業はタロイモの植え付けです。30センチほどの筒状の白い丸棒で測りながら等間隔に植えつけていきます。丸棒を立てて穴を開け、苗となるタロイモの茎を入れ、水田の中の泥土を苗の周りにかけます。裸足で入る畑の深さは大人の膝くらいで中は滑らかな細かい泥。平らではないので、転ばないようにバランスを取りながら、ミッションを遂行します。水田には小さなオタマジャクシやカエル、そしてそれを目当てにやってくる鳥。ロイはハワイの生態系を保つためにも重要な存在です。そして、この泥はミネラルも豊富で顔に塗ったら泥パックに!

ハワイアンの始祖 タロイモを次世代へ

泥を洗い流した後はレクチャーです。タロイモがハワイアンの始祖とされるハワイの神話から始まります。そしてタロイモの成長やタロイモがハワイアンの生活に欠かせないことを学びます。植え付けた茎は、葉と根の部分を切り落とした状態で、ここから新たな茎と葉が出てきます。切った葉と根(イモ)は、ラウラウやポイなどおいしいハワイアンフードになります。タロイモは6カ月で成長し、成長後は再び葉と根を切り、植え付けると生育します。こうして一本のタロイモが10~15世代まで繰り返し命を育み、6〜7年にわたり命を紡いだ後は別の場所に移植され、最後に花を咲かせ静かに枯れていくそうです。

マラマ体験ツアーの概要

所要時間2時間のマラマ体験ツアーは、「リジェネラティブ・ツーリズム」(再生型観光)という言葉の通り、その土地や人と触れ合い、環境をより良い状態へ再生することに貢献することができるツアーです。

料金:料金:大人 $51.95 子供 $36.95(送迎なし)
所要時間:2時間
催行時間:日によって催行時間、空き状況が変わります。
参加条件:5歳以上(12歳以下は大人同伴)
詳細HP:https://www.kualoa.jp/activities/malama/

クアロアランチ・ハワイについて

映画のロケ地として人気観光地として知られるクアロアランチ・ハワイは、かつては王族しか入ることが許されなかった神聖な場所でした。1850年にカメハメハ三世の相談役ゲリット・P・ジャッド氏が1300ドルで土地を譲り受け、サトウキビ栽培を始め、オアフ島最初の砂糖精製工場が作られました。1900年代には牧畜が始まりクアロア・ランチが誕生します。第二次世界大戦時には、軍所有の沿岸防御用の基地になり防空壕などの痕跡が残されています。戦後には乗馬などが楽しめるアクティビティも始まり、人々が楽しめる牧場へと進化しました。現在は、観光産業だけでなく、地元の子どもたちへの教育プログラム、農業や魚介類の養殖を行っており、自然資源の保護、クリーンエネルギーへの転換、廃棄物削減など、サステナブルな活動にも力を入れています。

住所:49-560 Kamehameha Hwy., Kaneohe
電話:808-237-7321
営業時間:7:30am~6:00pm

(取材/撮影:ライトハウスハワイ)

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