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ホクレアが教えてくれたこと: …

ホクレアが教えてくれたこと: 池田恭子氏 Vol. 10

2021.07.01

ハワイに暮らし、航海カヌーに関わりながら、「健やかさ(sense of wellbeing)」そしてハワイを通して見えてくるこれからの生き方について発信をしている、池田恭子氏。2007年航海直後に書いたホクレア航海回想録をお届けします。

ハワイに暮らし、航海カヌーに関わりながら、「健やかさ(sense of wellbeing)」そしてハワイを通して見えてくるこれからの生き方について発信をしている、池田恭子氏。2007年航海直後に書いたホクレア航海回想録をお届けします。

池田恭子氏 プロフィール

海の素人ではあるが、2007年のホクレア日本航海に通訳・教育プログラム担当で乗船。その経験を経て、「わたしたちの健やかさはどこからくるのか」という問いをもちながら、日本とハワイをつなぐ学びのプログラムを共創する仕事に携わる。現在はカウアイ島で子育てをしながら、大学で国際プログラムのコーディネーターの仕事をする。カウアイの航海カヌー「ナマホエ」にも家族ぐるみで関わっている。ハワイに暮らし、航海カヌーに関わりながら、「健やかさ(sense of wellbeing)」そしてハワイを通して見えてくるこれからの生き方について発信をしている。

この記事は2007年航海直後に書いたホクレア航海回想録から抜粋。

14年経ったいま、最後に

ホクレアの航海で感じたことを言葉にすること、説明をすること、まとめること、それをしようとすればするほど、できないと感じる自分がいた。ずっと書けずにいた。ある人には「書き言葉は言葉の墓場だ」といわれ、それに妙に納得する自分がいた。ハワイで勉強していたときにお世話になった先生にその話をした。彼は、「説明できないことがある、説明しようとするとエッセンスが失われるものがあることをまず受け入れなさい。そしてその上で、あなたはあなたの言葉でストーリーを語りなさい。」と話してくれた。自分の言葉で物語を紡ぐとき、そこから、必ず何かが伝わるはずだから、と。

2007年のホクレアでの航海体験は、14年たった今でも私の中で本当に大きな存在としてある。あの時に感じたたくさんのこと、ただただそれを忘れる前に残したくて、書いたこの回想録。14年たって、あらためて読み返してみて、どれだけ多くのことが記憶からこぼれておちていたのかに気づくと同時に、突き動かされるようにあの体験を記録しておいてよかったと思った。

「カヌーの象徴するもの、それは、大海原をいくカヌーは、宇宙に浮かぶ地球と同じであるということ。カヌーも地球も資源と空間は限られている。このような限られた資源・空間の中で「生き残り」そして「共生する」ためには、限られた資源を分かち合い、また綺麗事ではなく、生き残りの手段として、お互いを慈しみ、助け合うことが必要となってくる。グローバリゼーションが進み、あらゆる関係性の中で問題が悪化の一途を辿っているいま、カヌーの上で体験を通して学ぶ共生のための価値観はこの地球という宇宙に浮かぶ惑星の上での共生に役立つと感じた。」

14年前のこの言葉は、いま私たちがいる状況を見るとますます大切であると同時に不足しているとも感じる。2007年の航海後、ハワイの航海カヌーたちは航海をつづけた。ホクレアはMalama Honuaというメッセージと共に世界一周航海をし、私たちが生かされている地球の危機的状況、そして、その状況の改善のために活動している世界のコミュニティをつなげてきた。ハワイ諸島そしてポリネシアのカヌーたちはそれぞれのコミュニティにおいて大切なものを受け継ぐと同時に、求める未来に舵を取り向かっていくインスピレーションと原動力となるべく航海をつづけてきた。その中で私たちは自分たちの命と健やかさが支えられる無限に広がる関係性に目を向けはじめている。私たちはこの地球上の住民であるだけでなく、この地球という大きな生態系の一部であり、その生態系の未来を左右する力を持っている。気候変動、社会的な様々な問題を見ると、私たち人間の行く末はなんだか怖く、見ないふりをしたくなる。でも、ホクレアが教えてくれること、それは、私たちひとりひとりがナビゲーターとして見えない島をみつめ、より健やかな未来へと舵を取っていくことができるということ。そして、求める未来・見えない島を見つめて、航海をし続けること。航海にはリスクはある。でも最も大きなリスクはリスクを恐れて港に停泊しつづけること、最大の危険は何もせずとどまること。

ホクレアは2022年、そのメッセージを共に、環太平洋航海にでる。

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