2021.07.20

航海中の食事をご紹介。缶詰や乾物など、限られた食材で簡素なイメージがあるかもしれませんが、航海カヌーでの食事は、とても充実しています。

航海中の食事をご紹介。缶詰や乾物など、限られた食材で簡素なイメージがあるかもしれませんが、航海カヌーでの食事は、とても充実しています。

航海カヌーの食

海の上での食事となると、缶詰や乾物など、限られた食材で簡素なイメージがあるかもしれませんが、航海カヌーでの食事は、とても充実しています。

ホクレアには冷蔵庫がありませんが、たとえばキャベツや玉ねぎ、じゃがいも、ニンジンなど、冷蔵なしでも日持ちする野菜はたくさんあります。リンゴやバナナ、オレンジやレモンなども冷蔵なしで全く問題ありません。

そうした野菜や果物に加えて、お米や麺類、ワカメなどの乾物などを、1日分ずつ小分けしてカヌーに積み込みます。カヌーにはプロパンガスとコンロが積んであるので、火を使った調理も可能です。限られた食材でも工夫次第でバラエティは広がり、日々いろいろな料理を楽しんでいます。ハワイでは日本食もローカル食になっているので、ご飯を炊いたり、みそ汁を作ったりするものも、カヌーの定番メニューです。

さらに航海中は海からの恵み、カツオやシイラ、サワラなど、大きな魚が釣れることもしばしばです。1日ではとても食べきれないほど大きな魚が釣れた時は、日干しにしたりするなど工夫して、無駄なく自然の恵みを頂きます。

宇宙に浮かぶカヌー

どこまでも広がる海、20メートルある大きな航海カヌーも、大海原の上では砂粒のように小さな存在です。そんなカヌーで大海原での時間を過ごしていると、自分たちの生命が何に支えられているのかを、とてもリアルに感じることができます。

海と空だけの世界、カヌーという空間がなければ生きていけないのはもちろん、そのカヌーに積み込んだ水や食料が、日々、自分たちの生命を支えてくれている。それなしでは決して生きていくことができないということを、あらためて実感します。

限られた水や食料しかない航海カヌーの上では、誰もが自然と、必要なものを必要なだけ使うようになります。水道をひねればいつでも水が出る、スーパーに行けば好きなだけ食材が手に入る、そんな普段の生活では、「水や食べ物に限りがある」ということを実感することは難しいかもしれません。けれど、地球は宇宙に浮かぶカヌー。私たちは宇宙の中で、この地球という空間なしには生きていくことができない、そしてその地球の水や食べ物に限りがあるのは、大海原を進むカヌーと同じです。

水や大地の恵みの豊かな国、日本では特にそれが感じにくいかもしれません。

なかでも水は、「湯水のように使う」という言葉があるように、日本では昔から限りなくあるもの、猛暑や雨のない日が続き「水不足」という言葉が聞かれても一過性のもの、というイメージがあるかもしれません。けれど実は、地球の「限られた水」に日本も大きな影響を与えているのです。

大量の「水輸入国」日本

「バーチャルウォーター」という言葉を聞いたことがありますか?

食料を輸入する場合に、その生産国で食料を作るのに一体どれくらいの水が必要だったかを試算したものを「バーチャルウォーター」と呼びます。たとえば日本がアメリカから1キロのトウモロコシを輸入した場合、そのトウモロコシを生産するのに、1,800リットルの水が必要になります。牛肉1キロを輸入する場合には、さらにその2,000倍もの水が必要とも言われています。

日本人の水摂取量は、飲食では1日1人あたり平均3ℓですが、農業用水では1日1人あたり3,000ℓも使っていると言われています。目に見えないところで大量に水を使っている私たち。大量生産のための極度な灌漑農業などで、世界中で深刻化する干ばつには、日本も大きな影響を与えているのです。

日本に暮らしていると、リアルには感じにくい深刻な水不足も食料不足も、世界中の水を間接的に輸入していることで実現されているものなのです。

自分たちの使う水や食料が、目に見えるところにある航海カヌーの上と違い、グローバル化する世界の中では、想像力をめいいっぱいに使わなければ、こうした地球の現状は実感しにくくなっています。自分ひとりが何をしても変化がないのではないかと感じることもあるかもしれません。

こうしたグローバルな課題を一気に解決することは難しいかもしれません。けれど、私たちが宇宙に浮かぶ大きなひとつのカヌーであることをイメージし、それぞれの場所で、できるかぎりの循環を生み出せば、その小さな循環が大きな循環につながっていくのではないでしょうか。

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