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「シーアスパラガス」を生産して…

「シーアスパラガス」を生産している「オラカイ」のサステナブルな取り組み

オラカイ株式会社
2022.06.15

「シーアスパラガス」というハワイ産の食材を知っていますか? 日本語で「厚岸草(アッケシソウ)」というこのシーアスパラガスは、ヨーロッパやアメリカ本土で人気の高い食材で、ハワイでもレストランをはじめ自宅でも簡単に料理に使える栄養価の高い食材として人気があります。

「シーアスパラガス」というハワイ産の食材を知っていますか? 日本語で「厚岸草(アッケシソウ)」というこのシーアスパラガスは、ヨーロッパやアメリカ本土で人気の高い食材で、ハワイでもレストランをはじめ自宅でも簡単に料理に使える栄養価の高い食材として人気があります。

シーアスパラガスは、分子生物学と植物生理学を専門とするウェンハオ・サン博士が2006年に創立したマリン・アグリフューチャー社が商品化したものです。現在は株式会社オラカイのもと種苗の培養、開発、生産を行い、シーアスパラガスやオゴなどの海産物を全国に供給しています。オラカイとは、ハワイ語で「海からの健康的な恵み」の意味を持ちますが、その意味の通りシーアスパラガスは海水で育てる植物です。

サン博士は、特殊な生態系を使いノースショアーに7エーカー(2.8ヘクタール)の水田をつくり(現在は敷地の半分のみ使用)、シーアスパラガスやオゴ(海藻)を育てています。これは、現在ハワイで不足しつつある淡水と土地を使わず、塩水の井戸から水田に水を引いており、環境に優しいことが博士の畑の画期的な取り組みです。

自然の摂理に従い農業をサスティナブルに維持して「シーアスパラガス」を生産しているオラカイ株式会社のサン・ウェンハオ博士をインタビューしました。

Q こんにちはサン博士。今回は「シーアスパラガス」のことを色々教えてください。シーアスパラガスはどのような植物ですか?

シーアスパラガスは現在ハワイで不足しつつある淡水と土地を使わず、塩水の井戸から水田に水を引いて海水で育てる植物です

シーアスパラガスには、ビタミンA、B6、B9、C、D、E、食物繊維、アミノ酸、カリウム、マグネシウム、カルシウム、そして心疾患を予防する強力な抗酸化物質であるTMGが豊富に含まれています。ビタミンB9の別名は葉酸で、これは肌と脳に良いビタミンとされており、アンチエイジングの食材として紹介されているほどです。

Q. 毎日シーアスパラガスを食べている博士のお肌は、それでとても若々しいのですね。ところで、水田ではシーアスパラガスはどのように育てているのですか?

博士:シーアスパラガスは、1回収穫すると枝が二手に分かれ、わかれた枝から収穫すれば次は4つに分かれます。つまり、収穫が毎回2倍になり、5ポンドの量が10ポンドに、次が20ポンド、40ポンド・・・最後に100ポンド。それ以上枝分かれをすると多すぎて育ちが悪くなるのでその時点で苗を入れ替えるのです。

種から苗になるまでに3ヶ月半ほどかかり、そこから水田に植え替えて2~3か月育てます。さらに2週間ごとに収穫し、4~5回収穫したらまた1から育てなおす。その繰り返しです。

Q.「シーアスパラガスの培養のカギは『サスティナブル』である」、と博士は言っていますが、それはどういうことですか?

私たちはオープン水耕栽培を行っています。完全に自然と一体化しているシステムです。この環境のポイントは海藻の「オゴ(リム)」です。オゴがシーアスパラガスの水田の水をきれいにして酸素を作っているのです。酸素が作られることにより魚が住みやすい環境になるのです。

サスティナブルにするためには、低コストにすることが大事なのです。ほとんどの水耕栽培は酸素の機械を入れなければ魚が生きていけません。また育てる植物にも酸素が必要なのです。ここでは、オゴがたくさんの酸素を作ってくれることで私は酸素の機械を導入しなくてよくなったのです。つまりこの水田は自立しているシステムで、水田の中で自給自足しているわけです。

魚は多少のアンモニアを輩出しますが、それはオゴとシーアスパラガスが吸収するので、人間が手を加える必要がありません。また、魚はオゴを食べ、オゴは魚が栄養を与え共存しているのです。酸素機も入れなくて良いので電気代はいらない、水も入れ替える必要がないので環境にとても優しい、そんな栽培場(水田)です。もしこのシステムがなく、使い切った水を放流した場合、それが汚染につながる可能性もあります。以前私の水田の隣にはエビの養殖の水田がありましたが、水の管理をする費用が高すぎて破綻してしまいました。

Q. 博士の水田はそのような機械を使用しなくても成り立つシステムなのですね。ここではエビも育てられるのですか?

はい。エビは育てていませんがこのシステムを使えばできます。シーアスパラガスは水面より上に育つので葉を食べられることはありませんが、根っこを食べられてしまう可能性はありますね。それを防ぐために、私たちはプラットフォームに網を張っています。この網が魚から根の部分を守る役割をしています。環境のバランスを工夫すれば、魚はシーアスパラではなく水中にあるオゴを食べるようになります。

サスティナブルにするために人間の手を加えているので、一種の人工的なエコシステムですね。

Q. オゴもここにはなくてはならない存在なのですね。

はい。オゴもシーアスパラガスもここにはなくてはならない存在です。シーアスパラガスがなければ水がきれいにならないのですから。オゴはシーアスパラガスにとって友好的な立場であり必要な友達ですね。

Q. 博士は、ここまで計算されていたのですか?

いいえ。私が知っていたことはシーアスパラガスは海でも栽培できること、そして水をきれいにできることだけでした。オゴがシーアスパラガスと共存できることは知りませんでした。これは神様が教えてくれたものだと思いますよ。もちろん事業を始めたばかりの時はそのようなことは知らなかったので、収穫も少なく、しかし出費は高く困っていました。しかし、ここでも大事だったのがサステイナブルであることでした。ある時水田にオゴが現れたのです。オゴはハワイではよく食べられている食材ですので運が良かったです。私たちのオゴと他のオゴの決定的な違いは、冷蔵できるものでした。もともとオゴは冷蔵できないので保存に困るバイヤーが多かったのです。しかし環境が良かったのか、栄養分が高かったからなのか、私たちのオゴは枝が細く食感もコリコリしているので冷蔵できてしまうのです。販売を独占するのにはそう時間がかかりませんでした。今では私たちのオゴが一番売れているオゴになりました。

カハラホテルやレストランマリポサの料理で出されたオゴが自分のものだと気づいたときは驚きました。

Q. サン博士の農場から来ているシーアスパラガスは見ればわかるのですか?

サステイナブルなオゴは違うのですぐにわかりました。本来は少しずつしか売れない物ですが、過去に400〜500ポンドを買い取った人もいました。自立しているシステムを持っているからこそできることです。農薬も使っていないのでとてもオーガニックですし総合的にとても良い食材になったのです。これには「アレロパシー(Allelopathy)」と言って科学的に証明されていることです。

シーアスパラガスが合成して化学物質を分泌し、その化学物質が水田に影響を与えているのです。この化学物質は危ないものではなく、シーアスパラガスを守るために放出されているのですが、これが水の中にいる微生物や微細藻類を駆除しているのです。そのため水がきれいになり、オゴが育つ環境が整ったのです。オゴはその恩恵を受けた最初の生物で、私たちはこれを利用して販売し、農家を支援し、農場経営を維持することができました。そして今、私たちはそれを世界の人々に販売する環境が整ったのです。

Q. オゴが発生したことは運が良かったのですね。

運が良いといえばそれまでですが、この話は同時に私自身に耐久力の大切さを教えることでもありました。このビジネスを始めたとき、私には当時ビジネスパートナーがいました。しかし販売も低迷し一時はこのビジネスをたたむことも考えなければいけなかったのです。ビジネスパートナーには副業がありましたが、私にはこれだけしかなかったのです。

2006~2007年です。私にはすでに有名レストランから買ってもらえていたので、どうしても手放すことが出来ず、どうにかこの困難を乗り越えようと思い試行錯誤を繰り返し、真水よりも井戸から挽いた塩水のほうが育ちが良いことに気づき、それをパテントにしました。

シーアスパラガスの特徴は、数多くある野菜のなかでも塩水を好む野菜であることです。また、真水では弱ってしまう植物でもあるのです。真水だとシーアスパラガスの中がきれいになりすぎて、虫や病気にかかりやすくなるのです。そうなると枝の関節がとても脆くなってしまいます。

根気強く、同じ問題を解くために試行錯誤を繰り返し、わかったら次へ進む。すべて運だけではありません。確かにオゴが現れなければエコシステムに気づくことは出来ませんでしたけど。

Q. ここの水田に来る前の場所でも栽培していましたね? そこにはオゴは有りましたか?

そこでオゴの存在を発見したのです。この水田に来た時も最初はオゴなんてありませんでした。しかし、同じことをしたら同じようにオゴが生えてきたのです。水田によって生えてくるオゴは赤かったり茶色かったり色がかわりますが、基本は同じです。シーアスパラガスが水をきれいにしてオゴが生えてくる。これがルールでした。その自然の摂理に従うことで最初の苦労が報われました。エビの養殖場がエビ小屋を作り、次にトラックを作るように、そうやって少しづつ確実に維持してきたのです。それがバランスであり、理念であり、個性なんです。あきらめてしまったらその恩恵は受けられない。だから、私はこの原理を楽しみ立ち向かってから次に進むのです。

Q. サン博士の今後の目標は何ですか?

私の最終目標はシーアスパラガスではありません。これは私のテクノロジーを裏付ける最初の商品であるだけです。私のテクノロジーとは、陸上植物を海の上で栽培することです。このシーアスパラガスように。

私の目標はシンプルですが、ハワイ、アメリカ、そして世界にとってはとても重要なテーマです。このテクノロジーで農業を救うことだってできると思います。農業が今抱えている問題は主に二つ。まず、世界的な水不足です。日本ではどうかわかりませんが、インドや干ばつした地域が抱えている問題です。二つ目の問題は耕作可能な土地が年々減っていることです。

Q. 効率の良い農業で耕作可能な土地がどんどんなくなっていく問題ですね。

その通りです。毎年2500万エーカーの土地が塩分汚染によって失われています。塩分は肥料から来ているのです。肥料で土が腐り、毎年繰り返されていく。そして環境破壊と温暖化が進んでいるため、海水が徐々に上昇しているため、沿岸の土地は消滅しつつあります。2050年には土地も真水も足りなくなると予測されています。陸上植物を海上でも育てることに成功すれば真水を使用しなくてよくなるのです。人が使う淡水も節約できます。土地は新しいことに使うことができるでしょう。例えば、海の上で米を作れば、農業を陸から海へシフトさせることができます。

20年前は、陸上では育てられない植物と育てられる植物があり、可能性にも限界があると思っていました。しかし、それも根気強く考えていれば解決策がでてくるのです。私の専門は分子生物学と植物生理学ですが、常に考え方を変えて進化して行かなければならないです。

例えば、お米だって海の上で育てることができるというアイデアまで浮かび上がってくるのです。

もし、海上でお米を育てることができれば、世界の飢餓問題を解決することができます。今、世界の42か国もが飢餓問題を抱えていますが、そのほとんどは干ばつした地域に住んでいますが同時に海のそばにある国でもあるのです。海を所有しているのにそれを農業に使うノウハウを持っていない。確かに従来の農業方法だと無理ですが、もし私のテクノロジーが可能になれば解決できてしまうのです。

水不足、耕作可能な土地不足、そして世界の飢餓問題。この問題を解決できる可能性があるので私はこの仕事にとてもポテンシャルを感じています。これは政治的な解決方法ではありません。陸上の作物を海上で育てる。オゴ、魚とシーアスパラガスで作り上げた環境を商業化すれば収入を得ることができる。魚だって本当は売れるんです。大学などで研究して終わるだけではなく、実際にマーケットで売って人に喜ばれる商品を作って収入を得る。しかしシーアスパラガスのようにオゴが無ければ生きていけない植物もあるので、環境を作ることが最初のステップです。次は海辺の近くに移動することです。多方面から試される厳しい環境ですが、それに対応できるデザインをハワイ大学に来ていた日本人から教わりました。日本は波が荒いので、波に抗わず、抗わないことにより壊れない柔軟なデザインを作る考えに至りました。それがこのシーアスパラガスのプラットフォームです。海水が入ればそれにしたがって動くのです。そして魚もそこに住み始めるのです。

最後に、別の植物を一緒に育てる努力をすること。これは商業化にはあまり関係のないことです。しかしお米をシーアスパラガスと一緒に作るとしましょう。お米はどこでも栽培されているので作る価値自体は高く評価されませんが、シーアスパラガスは特殊な環境であることで価値が生まれます。もし、シーアスパラガスの影響による連鎖反応でお米が育てられるとどうでしょう。シーアスパラガスの副産物がお米になるんですよ。

この取り組みを実施したのは…

オラカイ株式会社

https://olakaihawaii.com/

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