「ワイキキ・ダウンタウン歴史街道ツアー」を主宰する、さゆり ロバーツさんに紹介して頂くハワイの歴史。ハワイ初心者の方にも、リピーターの方にもオススメの、ハワイの歴史にまつわる楽しい情報をシリーズでお届けします。
今回はスポット編。さゆりさんおすすめの、カメハメハ5世ゆかりの場所、銅像シリーズ、ヒルトンハワイアンビレッジ周辺、ウエスト・オアフのコオリナを紹介します。
こんな身近な所に⁉カメハメハ5世にゆかりのスポット
ハワイの12月の大イベントといえば、「ホノルル・マラソン」。実は毎年、このホノルル・マラソンの開催日前後に、ハワイ王国にとって大事な日がるんです。それは、12月11日。何があった日なのでしょうか。
12月11日。ハワイ王国を統治した「カメハメハ5世」が誕生、そして…
12月11日という日は、ハワイ王国を統治した5代目の王「カメハメハ5世」の誕生日で、1830年に、カメハメハ大王の孫として生を享けました。お名前は「Lot Kapuāiwa Kalanikupuapaikalaninui Kalanimakua Ali‘iōlani」。王となる前は「プリンス・Lot(ロット)」「プリンス・ロット・カプアイヴァ」と呼ばれ、現代でも「プリンス・ロット・フラ・フェスティバル」など、お名前を耳にすることがあります。
1863年にカメハメハ5世として即位したプリンス・ロット(以下、カメハメハ5世、または5世)。5世が即位した頃、欧米の文化や習慣がハワイに浸透する中で、政治の場ではハワイ語を使用したり、フラの復活を助けるなど、古代ハワイの文化を復興させようと努めた方です。そんなカメハメハ5世は、祖父であるカメハメハ大王をとても尊敬していて、大王を称える「キング・カメハメハ・デー」(6月11日)を制定した人物でもあります。自身の誕生日が12月11日、その日から、1年の中で反対の位置にある6月11日をキング・カメハメハ・デーにすることで、大王への敬意を表したと言われています。
カメハメハ5世がハワイ王国を統治して9年…内蔵疾患を患っていた5世は、体調を悪化させ、1872年に42歳で生涯を閉じました。その日は奇しくも、ご自身の誕生日である12月11日でした。
カメハメハ5世にゆかりの建物や場所が、実は身近なところに!
カメハメハ大王やカラカウア王に比べ、話題となる機会が多くはない印象の5世ですが、実は、5世に関する場所や建物に、皆さんも、行っていたかもしれないのです!5世にゆかりの建物や場所を、いくつかご紹介しましょう。
ピンクの外観が美しい「ロイヤルハワイアンホテル」
ワイキキを代表するホテルの一つ、ロイヤルハワイアンホテル。この建物がある場所は、かつて、このような様子でした。三角屋根の建物が、カメハメハ5世の別荘です。5世が過ごした場所にあるホテルということで、宿泊されたら、王族と同じ場所で目覚める、という経験ができますね。
写真:Hawaii State Archives
ロイヤル・ハワイアン・センターにある「パウアヒ王女像」
ロイヤル・ハワイアン・センターの中央部にある「ロイヤルグローブ」には、カメハメハ5世と結婚するはずだった、バーニース・パウアヒ王女像があります。パウアヒ王女は、アメリカ人のビショップ氏と出会い、結婚してしまいます。5世はその後、結婚することなく、後継者を指名できないまま亡くなられたことで、カメハメハの名は5世で途切れてしまいました。5世とパウアヒ王女が、もし結婚していたら…ハワイの歴史は、大きく違っていたかもしれません。
5世の名を冠する「アリイオラニ・ハレ」
有名なカメハメハ大王像の後ろにそびえ立つ建物は、5世が使う宮殿として設計されたものでしたが、5世の希望により、住まいとしてではなく、議事堂として使う目的に変更され建てられました。しかし残念ながら、完成前に5世がお亡くなりに…。現在は、最高裁判所と、ハワイの裁判の歴史が学べる博物館となっています。正面に付けられた時計の下を見ると、しっかり「KAMEHAMEHA ELIMA, KA MOI.(カメハメハ5世、王様)」と刻まれています。この建物の名前の「アリイオラニ」は、5世の名前の一部です。
その名も「カメハメハ5世郵便局」
ダウンタウン散策の楽しみは、美しい歴史的建造物が次々と見られること。1800年代に建てられた美しいデザインの建物が並ぶマーチャント・ストリートには、1870年に完成した、ハワイで初となる郵便局の建物が保存されています。カメハメハ5世の指示により建てられたものですが、「郵便局にあたる建物を建ててほしい」と要望を出していたのは、当時、郵便事業を取り仕切っていた、後に王となるカラカウアだったという話が残っています。
この木、何の木?気になる木~♪でおなじみ「モアナルア・ガーデン」
ハワイの空の玄関、ダニエル・K・イノウエ国際空港のすぐ近くにある「モアナルア・ガーデン」。この木、何の木?気になる木~♪の歌でおなじみの「日立の樹」がある所で、広大な芝生の広場が広がる中に、モンキーポッドやウル(パンの木)などの木々や、歴史的建造物が見られます。保存されている建物の中には、カメハメハ5世が別荘として使っていた建物も。「日立の樹」を見に行かれる方はぜひ、広いガーデン内を散策してみては?
観光客の方々にもおなじみの場所に、カメハメハ5世にまつわる場所が、いくつもあるんです。事前に知れば知るほど面白い、ハワイの街歩き。見かける歴史的建造物が、誰にまつわるものなのかを調べてみると、面白い発見があるかもしれません
カメハメハ5世について詳しく知りたい方は、こちらへ
https://www.aloha-program.com/curriculum/lecture/detail/89
歴史的建造物が並ぶ素敵な道について知りたい方は、こちらへ
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銅像が目の前で光り輝く!現代の技術を使った、新たな銅像の見方をご紹介
ワイキキやダウンタウンを歩いていると、数々の銅像に出会います。歴史あるものになると、140年も前に造られたものも。それぞれが、一体誰なのか、何をした人々なのかなど、銅像にまつわる話をその場で聴けたら、「なるほど!」「へ~、面白い!」と、興味も深まりますね。今回は、現代の技術を使って新たに実現した、「銅像の新しい見方」をご紹介します。
ダウンタウンにある王族の銅像に会いに行ってみよう
ホノルルのダウンタウンにある2つの銅像の前に行ってみましょう。一つ目は、ハワイ王国最後の女王、リリウオカラニ女王の銅像です。イオラニ宮殿とハワイ州庁舎の間に銅像はあります。王国最後の女王ということもあり、ハワイアンの方々には特別の想いがある銅像で、毎日のように花やレイが置かれていきます。銅像に近づくと、赤紫色のプレートが目に入ります。
スマートフォンやiPadなどのデバイスを活用して見る銅像の姿
日々の生活で、もはや欠かせない存在のスマートフォンは、旅行先でも大活躍ですよね。銅像の前で、ご自身のスマホや、iPadのようなデバイスを使うことで、銅像を見ながら、AR体験ができるようになりました!
AR(Augmented Reality、拡張現実)とは、現実の世界にデジタル情報を重ね合わせる技術で、例えば、「ポケモンGo」がARの技術を使ったゲームの一つです。(スマホのカメラを通して見える現実の景色の中にポケモンのキャラクターが現れ、それらをキャッチする、というゲーム)このゲームと同じように、スマホのカメラを通して銅像を見ると、銅像が光や花々で美しく飾られたり、銅像の説明をする人が現れたりと、より興味深く、銅像の人物や時代背景などについて知ることができるようになりました。
アプリをダウンロードしておこう
銅像でAR体験をするには、まず、「Kii A Loaa」というアプリを、スマホやiPadなどにダウンロードしておきます(無料)。
アプリを開けると、上のような画面が出てきます。
リリウオカラニ女王像の前に到着したら、左側の写真下の「Enter AR」をタップします。そして、銅像前の赤紫色のプレートのQRコードを読み取らせます。「Line frame up to image on ground」と画面に出たら、カメラを銅像に向けてみましょう。すると…銅像の周りに光が漂い、花が舞い降りてきました!画面には、さらに選択ボタンが現れ、それぞれ、数分にまとめられた話を聞くことができます。それらの内容に合わせ、違った画像が登場するので、なかなかな見応え。まるで目の前で話してくれているよう。背丈もおそらく、実物大と思われます。すごい!
リリウオカラニ女王に並び、同じようにARを体験できるのが、カメハメハ大王像です。「ハワイ王国建国の父」であるカメハメハ大王の銅像は、7代目の国王であるカラカウア王の時代に造られたもので、イオラニ宮殿の向かいに、1883年に設置されました。140年という時を超え、現代の技術ARとカメハメハ大王像のコラボレーションが見られます。王国時代の人々が画面を見たら、きっとビックリすることでしょう…。
さらに、足元にはひし形のマークが現れます。それに沿って、歩きながら銅像が見られるような仕様に。内容は、英語でのみとなっていますが、ふんだんに使われている画像は、様々なことを教えてくれ、同時に、ハワイについて、より深く考えさせるものとなっています。
現代の技術を使うことで、銅像を実際に見ながら、ハワイの歴史や文化を学ぶことができるという新たな取り組み。ぜひ、皆さんも試してみては?
アプリ「Kii A Loaa」について詳しくはこちらで
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「伝説の人」を探してみて!ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ周辺散策
多くの日本人観光客の方も利用される巨大リゾート、ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ・ワイキキ・ビーチ・リゾート(以下ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ)。ここは、ある「伝説の人」に関わる大事な場所です。リゾート周辺を歩きながら、これからご紹介するスポットをぜひ探してみてください。さて、その「伝説の人」とは一体、誰なのでしょうか⁇
道の名は?
右手にアラモアナ・ビーチパーク、左手にアラモアナ・センターを見ながら、アラモアナ・ブルバードをワイキキに向かうと、ビルに囲まれ、思わず首がすくんでしまうホブロン・レーン(Hobron Ln)との交差点があります。この交差点を越えたところで、すぐ右手に、ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ内に入れる道が見えてきます。その道の名はカハナモク・ストリート(Kahanamoku St.)。さらに先に行くと、フラダンサーの見事な動きを再現した銅像が見えてきます。この銅像に沿ってカリア・ロード(Kālia Rd)に入ると見えてくる、すぐ右手に伸びる道の名は…パオア・プレイス(Paoa Pl)。「カハナモク」「パオア」…この2つの道の名は、どちらも、この方のお名前でした。
デューク・パオア・カハナモク(1890年生~1968年没)。ハワイの大事な文化の一つ、サーフィンを世界に広めただけでなく、オリンピック金メダリストとして、世界に名を轟かせた伝説の人です。この方が育った地が、現在のヒルトン・ハワイアン・ビレッジのある辺りなのです。
デュークが泳ぎを覚えた海
アラモアナセンター、ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ、フォート・デ・ルッシー辺りはかつて、「カリア」と呼ばれていたことから、その地名が現在「カリア・ロード」という道の名に残されています。カリアの地の前に広がる海…。
アラワイ運河ができる前は、川が流れ込んでいた所なので、栄養豊富な淡水と海水が混ざり、海藻や魚介類が豊富に獲れる、とても豊かな海でした。そんな海を目の前にしてデュークは育ち、そして泳ぎを覚え…ついには水泳でオリンピックの金メダリストに昇りつめます。ちなみに、デュークの初泳ぎは3歳の時。お父さんにカヌーで沖に連れて行かれ、ポンッと海に入れられ、自力で泳がされたそう。海が怖くて泳げない筆者も、この海で泳ぎを練習していたら…(妄想は続く…)。そのカリアの海を前に広がるビーチは、「カハナモク・ビーチ」。そして、ビーチとリゾートの間にある人工のラグーンの名は、「デューク・カハナモク・ラグーン」です。
知る人ぞ知る、デューク・カハナモクに関する展示
そのような、デューク・カハナモクゆかりの地であるヒルトン・ハワイアン・ビレッジでは、デュークに関する展示も大きく行っています。目立つ場所ではないので、知る人ぞ知る…といった場所かもしれませんが、ぜひ見つけてみてください!このような展示です。
散策の締めくくりに…
この展示が無事に見つかったら、散策の締めくくりとして…夕日に染まる、それはそれは美しいカリアの海を、「伝説の人」が生きた時代に思いを馳せながら、ゆっくりと眺めてみてはいかがでしょうか。
デューク・カハナモクについて、より詳しく知りたい時は…
https://www.aloha-program.com/curriculum/lecture/detail/152
サーフィンの歴史について、より詳しく知りたい時は…
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王族たちも楽しんだ!オアフ島西部のリゾート地「コオリナ」を探検
青空が広がるハワイの6~7月!ウェディングや夏休みをハワイで迎える方々で、街はとても賑やかな時期になります。この時期は木々の花々も美しく咲いて、写真撮影にもいい時期ですし、乾季である夏場は運転もしやすく、レンタカーを借りてのドライブも楽しい時期。今回は、「ちょっとドライブしてみたい」「きれいな写真を撮りたい」「いつもとは違う場所に泊まってみたい」…そんな希望をお持ちの方に、ぜひ訪れてみてほしいリゾート地「コオリナ」をご紹介します。
コオリナはどこにある?
コオリナ(Ko Olina)はオアフ島の西の端、詳しくは南西部に位置します。ワイキキからの距離は約41.7㎞、車で40~50分程。空港からの距離は約32㎞で、30分程のドライブで到着です。オアフ島南部を東西に結ぶフリーウェイ「H-1」、朝7時30分頃~8時30分頃はダウンタウンやワイキキに向けて、夕方4時~5時30分頃はその逆向きが混むので、その時間帯を避けるとスムーズに移動できます。
コオリナに向けて出発!
フリーウェイのH-1に乗って、西を目指します。ダウンタウン、空港、アロハスタジアム、パールシティ…と車を走らせていくと、だんだん景色は茶色っぽくなってきます。
降水量の違い
オアフ島の西側は降水量が少なく、コオリナの年間降水量は約560㎜。晴天の多いワイキキが約650㎜、雨が多い東海岸にあるクアロアは約1,380㎜(Rainfall Atlas of Hawaii—Geography Department-University of Hawaiʻi at Mānoa)と比べると、かなり乾燥した地域です。1年で、特に降水量が少なくなるのが6、7月。ウェディングの写真撮影も、バッチリきまりそうですね!
フリーウェイのH-1が終わり、道がファリントン・ハイウェイ(Farrington Hwy)となって間もなく、右手に「Exit」のサインが見えます。ここで右手の道に入ると、きれいに整備された道が現れ、さらに、こんなサインが見えてきます。
コオリナに到着!
線路との交差点です。オアフ島では現在、高架の上を走る電車の工事が進んでいますが、コオリナを通る線路は100年を超える歴史ある線路で、現在も使われています。踏切の棒がないので、よーく左右を確認して線路を渡りましょう。おめでとうございます!リゾート地「コオリナ」に到着です。巨大なリゾートホテルやコンドミニアムが見えてきますよ。コオリナに現在ある宿泊施設は、「フォーシーズンズ リゾート オアフ アット コオリナ」「アウラニ・ディズニー・リゾート & スパ」「ビーチヴィラズ・アット・コオリナ」「マリオット・コオリナ・ビーチ・クラブ」(書き方は各ウェブサイトの日本語表記に合わせています)。ホテルが密集したワイキキとは違い、どこもゆとりある造り。道を歩いていても、静かでのんびりした雰囲気です。 コオリナには、4つの人工的に造られたラグーンがあり、それぞれがパブリックビーチとなっているので、宿泊客でなくてもラグーンでのひと時を楽しめます。比較的穏やかなコオリナの海は、王族にも好まれた場所でもあります。
王族たちがひと時を楽しんだ場所
1600年代には、オアフ島の首長カクヒヘヴァが頻繁に訪れたと言われており、1800年代に入る頃にはカメハメハ大王とカアフマヌ王妃が、ハワイ王国最後の女王となったリリウオカラニ女王も、この地で英気を養ったという話が残されています。
リリウオカラニ女王は、コオリナの辺りまで列車で訪れたのでしょう。ベンジャミン・F・ディリングハムが設立したオアフ・レイルウェイ&ランド・カンパニーが、ホノルルからオアフ島西部を通ってノースショア、さらには北東部のカフクまで線路を伸ばしました。リリウオカラニ女王は列車で、ノースショアにまでよく出掛けていたそうです。線路の一部が残されており、現在、水・土・日に観光列車が走ります。のんびり進む列車は、アイスクリームショップやコンビニ、レストランなどが並ぶ「コオリナ・センター」で一旦停車。コオリナの各リゾートホテルやコンドミニアムから、徒歩でも行ける場所にある便利なショッピングセンターには、線路を堂々と横切って入ります。
素敵なコオリナの地で、結婚式を挙げるカップルもたくさん!ビーチに出ての写真撮影も、雨の少ないコオリナでは、素晴らしい写真が撮れますね。グーンの奥に沈む夕日は、感動的でもあります。王族たちも、この夕日を眺めていたんですね。コオリナは英語で「プレイス・オブ・ジョイ(喜びの地)」と訳されるこの場所には、様々な形の「喜び」が見つかりそうですね!
オアフ・レイルウェイ&ランド・カンパニーに関する建物はこちら
執筆:さゆりロバーツ ワイキキ・ダウンタウン 歴史街道ツアー https://www.hawaii-historic-tour.com/tourguide
本稿は、2024年に旧allhawaiiに掲載された記事を編集したものです。
記事内の画像は、特記がない限りHawaii Historic Tour LLCに帰属します。
