ハワイ在住デザイナー&アーティストのためのマネージメント会社を経営するGalura百合子さんが、ハワイでは欠かせないアロハウェアのブランドを紹介。老舗からここ数年で急成長のブランドまで、それぞれのブランドストーリーを知って、滞在中にお気に入りの一着を探してみてください。
ハワイアンの伝統文化や自然を表現するリゾートウェアブランド Kahulale'a
ネイティブハワイアンのオーナーデザイナーが手がける人気ファッションブランド、カフラレア(Kahulale’a)。2013年、ハワイ島出身のプロのフラダンサー、ケハウラニ・ニールソン(Kehaulani Nielson)さんが、ビンテージのアロハシャツやムームー、そしてフラ公演やライブミュージックパフォーマンスで度々訪れていた日本で集めた中古の着物帯などをアップサイクルして二つ折りのクラシックなクラッチバッグを作り、イベントで販売をスタート。ケハウラニさんが手がける上品なデザインセンスと懐かしくもユニークなビンテージ生地が話題となって、瞬く間にフラ仲間や地元セレブリティーの間で人気となったブランドです。
その後、継続的な供給が難しいビンテージの生地からオリジナルのプリント生地を使ったデザインへ変更し、ハワイとフロリダのディズニーリゾートや、人気セレクトショップで扱われるように。そして2017年、ケハウラニの念願の夢だったリゾートウェアコレクションを、ハワイアンの伝統的なスタイルとモダンテクニックを融合させたファッション&アートの祭典マモ・ウェアラブル・アートショー(MAMo Wearable Art Show)で発表。ハワイの人気イベントであるメイド・イン・ハワイ・フェスティバルや、フラの一大イベント、メリー・モナーク・フェスティバル(Merrie Monarch Festival)などでも精力的に販売を行い、多くの顧客を獲得し、2019年アラモアナセンターに初めての直営店をオープンさせました。
プロのフラダンサーや地元ニュースレポーター達の間でも愛用される人気ブランドへと成長したカフラレアの特徴は、何と言ってもプリントデザイン。ハワイ固有種であるオヒアレフアの花やマモという鳥、ニイハルシェルなどが描かれたプリントは、ハワイのユニークな文化や自然のストーリーを物語っています。
「多くのデザインは、私の故郷であるハワイ島や私のバックグラウンドであるフラの世界からインスピレーションを得ています。私たちハワイアンにとって馴染みのあるプリントデザインを、私のブランドを通じてもっと多くの人たちに知ってもらいたいですね」とケハウラニさん。観光客のお客様とはユニークなプリントデザインから会話に発展することもしばしば。ハワイ文化の啓蒙活動にもつながるそう。
「ブランドのシグネチャープリントは、ホポエレフアオプナ(hopoelehuaopuna)です。ハワイ語で『満開に咲くレフアの花』という意味ですが、これは私の娘のミドルネームでもあるんです」カフラレアのブランド名も実はケハウラニさんの愛娘のファーストネームからきています。家族の絆が強く感じられるブランドというのも、ハワイアンカルチャーらしさ。
ハワイで縫製されるコレクションでは、カッティング後に残った余り布を使い、ヘッドバンド、キーチェーン、ストールなどを作って販売。無駄を出さないように心がけているとか。ブランドスタート時のアップサイクルの概念は、今でもこのような形で継続されています。
イベントでハンドメイドのバッグを売っていた頃から数年間で次々と進化を続け、ハワイアンを代表するファッションブランドへと成長した、カフラレア。今後もますます目が離せない注目のハワイファッションブランドになりそう!
カフラレア ウェブサイト:
昔ながらの製法を守り続けるアロハシャツブランド Kona Bay Hawaii
コナベイハワイは、ビンテージアロハシャツを数百枚所有するコレクターのKC木内さんが2001年にハワイ島のコナでスタートしたブランド。ノースコナにはカイルアベイという湾がありますが、あえてコナベイとブランド名につけたのは『実在しないから面白い』というKCさんの粋な計らいでした。
昔ながらのアロハシャツの製法にこだわり、日本の抜染という技術を使ってレーヨン生地にプリントをし、生地は船でハワイまで運びホノルルで縫製。一枚一枚丁寧に出来上がったメイドインハワイのアロハシャツを、ハワイから世界中に送り出しています。
ハワイのアロハシャツメーカーで、今でも日本で抜染をしているのはコナベイハワイだけ。カパフルにあるベーリーズ・アンティーク(Bailey’s Antiques)という15000枚ものアロハシャツを所有し、40年位上営業を続けるアロハシャツ専門店のオーナー、デイビット・ベーリー(David Bailey)さんも「一番良いレプリカを作っているのはコナベイハワイだ」と品質ナンバーワンの太鼓判を押し、コナベイハワイのアロハシャツを販売しています。
KCさんが昔ながらの製法でアロハシャツを作り続けているのには理由が。ビンテージのアロハシャツに魅せられて、最高の時代のものを現代に蘇らせるために、クオリティーの高いシャツを自分も作ってみたかったといいます。アロハシャツのことを調べていくと日本で抜染をして生地を作っていることにも縁を感じたそう。
「この日本の抜染で作られるアロハシャツを守り続けていきたいと思っています。僕が辞めてしまうと終わってしまうので、次の世代へ継承していきたいですね」と優しく語るKCさん。
ハワイに来る際には、ぜひハワイの心地よい風に吹かれながらコナベイハワイストアに立ち寄ってみてください。「シャツを生産する際に二度と同じプリントと色の組み合わせはやらないようにしています。だから一期一会なんです。その時に買わないと無くなってしまうので」
なるほど!気に入ったシャツが見つかったら、ぜひゲットしくださいね。アロハシャツに造詣の深いKCさんとの会話も、ぜひ楽しんでみてください。
コナベイ ウェブサイト:
ハワイアンデニム、パラカを今に伝えるローカルブランド Palaka Hawaii
ハワイでパラカとして知られる、格子柄(チェック)の厚手の綿生地やシャツ。もともと1800年代にイギリスやアメリカの船員達からもたらされたと言われています。このパラカを使ったシャツやジャケット、オーバーオールなどが、1920年代にハワイプランテーション時代に農園で働く人たち、またパニオロ(ハワイアンカウボーイ)たちの間で流行となり愛用されていました。
アロハシャツよりも長い歴史を持つパラカは、丈夫で長持ち、そして乾きが早く、強い日差しが照りつく過酷な環境の下で働く労働者の体を守ってくれたことから、ハワイアンデニムと呼ばれ親しまれました。ハワイの歴史的そして多種多様な人たちに愛されたことで、「アロハシャツよりもアロハであり、ハワイで最も重要なシャツである」と、ハワイの服飾文化の研究の第一人者で、ハワイアンワークウェアへの造詣の深さは世界一といわれるバーバラ・F・カワカミ(Barbara F. Kawakami)氏が残した言葉です。
そんなパラカを現代のライフスタイルに合わせたファッションとして80年代から発信しているブランドが、パラカハワイ(Palaka Hawaii)。パラカ・ハワイをパラカ専門ファッションブランドとして1985年に始めたのが、スパーキー・ドゥー(Sparky Doo)氏。パラカ・ハワイ以外にも、スポーツウェアブランド、ローカルズ・オンリー(Locals Only)やハワイで初めての女性のためのサーフショップ、リクイッド・アロハ(Liquid Aloha)、そして老舗アロハシャツブランドのパイナップル・ジュース(Pineapple Juice)やハワイアンムーン(Hawaiian Moon)のオーナーでもあります。
「パラカチェックの生地を使ったコレクションを発表するハワイブランドはあっても、パラカ専門のブランドは、パラカ・ハワイだけだよ」と語るドゥー氏。ドゥー氏の父親も祖父もハワイでアパレルに関わる事業に携わっていたとか。特に、ドゥー氏の祖父が1904年にチャイナタウンでオープンした紳士服店ヤット・ロイ・ドライグッズ&クロージング(Yat Loy Dry Goods & Clothing Co.)は、キングストリート沿いに店を構え、メインのアイテムはテイラースーツながら、ベストセラーはプランテーショーンで働いていた人たち用のパラカシャツやエプロンでした。
子供時代から衣料に囲まれて育ったドゥー氏は、数々の米有名デザイナーを排出したニューヨークのファッション工科大学(Fashion Institute of Technology)を卒業し、メードインハワイの複数のアパレルブランドを背負って、世界中の展示会でハワイファッションを紹介してきたそう。
「メイドインハワイのファッションを通じて、ハワイというものを世界の人たちに知ってもらいたいという気持ちが強かったですね。今まで色々なブランドを設立してきましたが、パラカをやりたかったのは、ズバリ歴史は変わらないから。パラカは永遠と信じています」と語るドゥー氏。
マウイ島のクラにあるウル・パラクア牧場(Ulue Palakua Ranch)では、ドゥー氏がハワイで生産するカスタムのパラカシャツを販売。ここでは実際にパニオロたちがトーナメントなどでパラカシャツを着用しています。そう、パラかの歴史は現代にも受け継がれ、続いているのです。
農園で働く日系移民者たちは、パラカを「碁盤地」と呼び、浴衣のプリント柄に似ていることから愛用しては故郷に思いを馳せていたとか。日本人の私たちにも縁があり、ハワイの歴史としても重要なパラカを、メイドインハワイで提供し続けているパラカ・ハワイをぜひチェックしてみてください。
パラカ・ハワイ/ Palaka Hawaii
[取扱店舗]
-Ulu Palakua Ranch(マウイ島クラ)
-Nā Mea Hawai’i ワードビレッジ
-Homegrown パールリッジセンターなど。
ハワイファッションブランドのレジェンド Nake‘u Awai Designs
空港からほど近い町カリヒ(Kalihi)。住宅と商店が混在するエリア、小さなプラザの中に構えるオフィス兼ショップ、ナケウ・アヴァイ・デザインズ(Nake‘u Awai Designs)。ここにハワイファッション界のレジェンドがいます。
85歳にして、今もなお現役で活躍を続けるファッションデザイナー、ナケウ・アヴァイ氏は、『ネイティブハワイアンとして初のファッションデザイナー』、『ハワイアンファッションの祖父』などと称され、業界内でも一目置かれる存在。1973年にスタートしたナケウ氏のブランドは、2023年には記念すべき50周年を迎えました。
ナケウ氏のユニークな歴史を紐解いてみると…。ハワイアンの血を引く者のみが入学を許される名門私立校、カメハメハ・スクールを卒業後、シアトルの大学でドラマの学位を取得し、ニューヨーク、ヨーロッパ、ロサンゼルスでダンサーとして活躍。ロサンゼルスでショービジネスのキャリアを積みながら、趣味で仲間のダンサーと一緒にマクラメを作っては、ビバリーヒルズのロデオドライブのショップに売ったりしていたそうです。
そして、1960年代にダンスの振り付け師にすすめられて、ファッションデザインを目指すことを決意し、コスチュームデザインをスタート。多くのハイウッドスターたちのファッションデザインを手がけたボブ・マッキー(Bob Mackie)やジーン・ルイス(Jean Louis)など、ファッション業界の重鎮の元で働き、マクラメを使って作ったベルトを、エルビス・プレスリーがラスベガスのコンサートで着用するなど、ファッションセンスはすでに光っていました。経験を積んだナケウ氏は、故郷であるオアフ島へ戻り、自身のブランドをスタート。それは半世紀前の1973年のことでした。
今でこそ、ハワイの植物や文化をデザイン化しプリントしたアパレルブランドが多数存在していますが、そのパイオニア的存在がナケウ氏であり、地元の生地スクリーン印刷工場を使って、ハワイ固有種や生息植物からインスピレーションを得たプリントを生産しました。これが、のちに「ハワイアンプリント」と呼ばれるようになり、ハワイのファッション業界のメジャーなスタイルとなるのは語るまでもありません。ホワイトジンジャー、シダ、ランタンハイビスカス、スパイダーリリー、アンセリウムやハラなど、ハワイで見かける植物のプリントを先駆けて行ってきました。
また、ナケウ氏はムウムウ(Muu Muu)や裾を引きずるフォーマルドレスであるホロク(Holoku)を、当時のアイコン的存在だった衣料店キャロル・アンド・マリー(Carol and Mary)や、リバティーハウス百貨店(Liberty House department store)で販売し、一般人にハワイアンファッションを普及させることにも尽力。現在はメンターとして、ハワイのファッション、アート、クラフト業界をサポートし、特にシグ・ゼーン(Sig Zane)、マヌヘアリイ(Manuheali‘i)、マナオラ(Manaola)など、ハワイのビッグファッションブランドのオーナーたちのメンターとなっていたのもナケウ氏でした。
ナケウ氏の後継者であるケアネ・アカオ(Keane Akao)さんは、メイドインハワイのファッションの将来を危惧しています。
「10年後に今と同じようにメイドインハワイの衣料を生産し続けられるのかとても不安に感じています。そのため、ガーラを開催して資金を募り、非営利団体として縫製工場を作るなどの案が出ています。縫い子さんたちへは技術職として十分なお給料や福利厚生を払い、メイドインハワイが後世にわたって続けられるようにしていきたいと考えています」とケアネさん。
実際に、ナケウ・アヴァイ・デザインズのプリント生地を作っている印刷工場も現在はオアフ島に1社しかなく、工場自体が大変混雑しており、生地を生産するにも時間がかかるとか。それだけ、手間隙と少ない技術者たちの力を借りて出来上がる洋服の一枚一枚は、本当に宝物のよう。
「これは、ポイを作るときに使う石製の打ち器(ポハク・クイアイ)をテーマにしたプリントです。円錐形のような形をしているのが通常の打ち器ですが、このプリントはもう一つ、カウアイ島で使われていた違う形の打ち器もアートとして表現しているのです」と説明してくれたナケウ氏。一つ一つのデザインにもディープなハワイアン文化がストーリーとして語られているのがナケウ・アヴァイ・デザインズの魅力の一つです。
ファッション業界のセレブリティーとは思わせない親しみやすいナケウ氏を、みんなが「アンクル!」と言って話しかけたり、挨拶したり。そんなアンクル・ナケウの作品とも言えるシャツやドレスをぜひ一度手に取ってみて!
ナケウ・アヴァイ・デザインズ/ Nake‘u Awai Designs
ウェブサイト:https://www.hinakeuawai.com/
新オーナーになり再活性化!メイドインハワイのアロハウェアブランド Paradise Found
ホノルルで40年以上の歴史を持つメイドインハワイのアロハウェアブランド、パラダイス・ファウンド(Paradise Found)。17世紀イングランドの詩人、ジョン・ミルトン(John Milton)の叙事詩「失楽園(Paradise Lost)」から言葉遊びをして生まれたパラダイス・ファウンドは、リゾート、レイバック、ハッピーライフスタイルをブランドコンセプトに、アロハシャツをメインにレディースのトップスやドレスなどをハワイで作っています。
パラダイス・ファウンドがその名を知らしめたのは、ハワイを舞台にした80年代のアメリカ人気ドラマ「私立探偵マグナム(原題Magnum P.I.)」で、主人公トーマス・マグナム(Thomas Magnum)役のトム・セレック(Tom Selleck)がここのアロハシャツを着用したことがきっかけでした。
赤色の生地に紫のオウム、緑の葉が印象的な「ジャングル・バード(Jungle Bird)」や、紺地のスター・オーキッド(Star Orchid)といった、トム・セレックが実際にパラダイス・ファウンドのオフィスへ行ってドラマ着用にセレクトしたアイコニックなプリント柄が、「私立探偵マグナムシャツ」と呼ばれ、今もなお人気のアイテムとして存続しています。
当時はインターネットやオンラインショップがあるわけもなく、アラモアナセンターのメイシーズの場所に当時あったリバティーハウス(Liberty House)や、カリフォルニア州のゲリーズ・アイランド(Gary’s Island)、フロリダ州のロン・ジョン・サーフショップ(Ron John Surf Shop)等、アメリカ本土の小売店で多数扱われるようになりました。さらに、初代私立探偵マグナムのシリーズが終了した後には、ドラマで着用されたアロハシャツの数々がワシントンDCにある世界クラスのミュージアム、スミスソニアン歴史博物館(Smithsonian Institution of American History)のテレビ歴史コーナーに、メモラビリアとして飾られたことも名誉ある出来事でした。
そんな素晴らしい歴史を持つパラダイス・ファウンドは、2021年パンデミックの最中に新しいオーナーに変わりました。エンジニア出身で、Eコマースに長けたスコット・ムラカミ(Scott Murakami)氏と同級生のチャド・イトウ(Chad Ito)氏。二人はことあるごとに偶然の再会を繰り返し、2021年にビジネスを一緒にやることを決意、パラダイス・ファウンドを買収したのでした。90年代から変わらなかったウェブサイトを一新させ、オンラインショップをすぐに開設しパンデミックに対応。また新しいプリント柄の開発や、昔の人気のプリントの復刻版などブランドの再活性化に力を注ぎました。
パラダイス・ファウンド以外にも、1930年代から60年代にかけてハワイで存在し、その影も形も無くなってしまったビンテージアロハウェアブランド、ダイアモンドヘッド・スポーツウェア(Diamond Head Sportswear)を2023年に復活させ、当時のレトロプリントを復刻させてハワイの歴史文化の一つであるアロハウェアブランドの復活に一役買っています。
スタートした当初から全てのアイテムをハワイで縫製し、メイドインハワイを貫いているパラダイス・ファウンド。アロハシャツが初めて登場した1930年代当時の製法を今でも守り続けています。
「シャツやドレスをハワイで縫製することは年々難しくなってきています。しかしながら、可能な限り今の製法を守っていきたいと思います。ハワイで作られたパラダイス・ファウンドのシャツを着用することで、ハワイの一部を身につけていると感じていただけたらそれはとても意味のあることだと感じています」と、スコットさんとチャドさんは語ります。
今後はバッグなどの雑貨類も充実させてアロハライフスタイルを提案するブランドを目指しているそう。ホノルルの空港近くにあるオフィスを訪ねると、前オーナーも引き続きブランドのサポートをしていて、新旧オーナーが協力している素敵な様子を垣間見ることができました。昔からのハワイのブランドが、世襲でなくローカルのコミュニティーの中で世代交代をしていき、息吹が吹き込まれ繋がっていく姿に今後も注目していきたいです。
パラダイス・ファウンド/ Paradise Found
執筆:Galura 百合子 インスタグラム
本稿は、2024年に旧allhawaiiに掲載された記事を編集したものです。
メイドインハワイについては、allhawaiiの以下のページでもご覧いただけます。
https://www.allhawaii.jp/about/madeinhawaii/
