ハワイの伝統航海カヌー「ホクレア」──星と風に導かれ、今もなお大海原を旅する希望の象徴|特集|ハワイ州観光局公式日本語サイト

ハワイの伝統航海カヌー「ホクレア」──星と風に導かれ、今もなお大海原を旅する希望の象徴

#サステナブル

▼伝統航海カヌー「ホクレア」とは

ホクレアは、古代ポリネシア人がタヒチからハワイへと航海した際に使ったとされる双胴船を、1975年にアメリカ建国200周年記念事業の一環として復元したカヌーです。

ハワイの伝統航海カヌーの最大の特徴は、2つのカヌーを並行に甲板でつないだ双胴構造と、「スターナビゲーション」と呼ばれる古代の航海術を用いて航行すること。これは、コンパスやGPSなどの現代技術を使わず、太陽・月・星・風・波・海鳥などの自然の兆しを頼りに進むという、極めて繊細で人間の感性を研ぎ澄ます高度な技法です。

「ホクレア」とはハワイ語で「喜びの星」を意味する言葉。今では、うしかい座の一等星「アークトゥルス」と呼ばれている星をさしています。この星は常にハワイ諸島の真上を通るため、現代技術を用いずタヒチやマルケサス諸島からハワイへ海を渡った古代の航海師たちは、この星の高度でハワイ諸島の位置を推測していたと言われています。

一度は失われたこの古代の航海文化は、ホクレアの復活によって見事に蘇り、以後50年以上にわたり、ハワイを起点に太平洋の島々や日本、さらには世界一周を果たすなど、累計30万キロメートル(地球約7周分)以上の航海を成し遂げてきました。今やホクレアはハワイの文化と精神を象徴する存在として、ハワイの人々の誇りとなっています。

▼ホクレアの構造と暮らし

ホクレアの構造は極めてシンプルで、19メートルのカヌー2艘をつなぎ、中央に2本のマストを立てただけの造りです。帆を風で広げて前進し、エンジンはありません。航行の成否の多くはクルーたちの自然との対話力に委ねられますが、航海の成功を支えるために、「ホクレア」には多くの工夫が見られます。

SAIL 帆:「ホクレア」にエンジンはなく、2つの帆が動力の源。大きく広げ、風をキャッチすることで前へと進みます。また「ホクレア」の帆はキャンバス地で作られていますが、古代のポリネシアの人々は、この帆をタコの木の葉っぱで編んで作っていました。

MAST マスト:大きな帆を支えている柱です。帆が強い風を受けても耐えられるほど、しなやかで頑丈にできています。

HULL 船体:2つの船体(カヌー)をつなげた双胴カヌーと呼ばれています。古代カヌーと同じように釘は使わず、全てロープで繋げてあります。釘を使わないことで大きな波もしなやかに受け、かつ、2つの船体をつなげることで揺れが少なくなるため、大海原の長距離を航海するのに適しています。現在の「ホクレア」には現代のパーツも使われていますが、古代カヌーの船体はコアの木のような硬くて丈夫な丸太をくり抜き、パーツとパーツをつなげるロープはココナッツの繊維で作られていました。

DECK 甲板:2つの船体をつなげたビーム(梁)の上に板をはることで甲板は造られています。帆の開け閉めと張り具合の調節、大きなパドルでの舵とり、料理などをするために自由に動き回ることができます。航海中の作業の場であり、生活の場でもあります。

KITCHEN キッチン:プロパンガスとコンロを積んであり、雨や波しぶき、大揺れでも、料理ができるよう火に強い箱の中で固定されています。

BEDROOM 寝室:貯蔵スペースの上に板とマットを敷いてクルーたちは眠ります。長さ約150cm、幅は1mほど。限られたスペースに納まるだけの個人の荷物をカヌーに積むことができます。

STORAGE 貯蔵スペース:クルーの寝室の下、船体の底の方に貯蔵スペースはあり、水や食糧、カヌーの修理に必要な道具、予備の帆、医療品など、航海に必要なものがしまってあります。陸から遠く離れた海の上では航海中に食料や水、修理道具を調達するのは困難です。航海中はカヌーに積んでいる物資だけで生活をまかなう必要があるのです。

PANEL 太陽光パネル:航海中はほとんど電気を使いませんが、より安全に航海するため「ホクレア」と共に航海するエスコートボートとの連絡をとる無線などの通信機器や、夜間、他の船が「ホクレア」を目視できるように点灯する航海灯の電源になります。

NAVIGATOR ナビゲーターの座る場所:航海中は、カヌーを360度取り囲む大海原の水平線が羅針盤で、カヌーは常にその中心にあると考えます。ナビゲーター(航海師)はこの場所から、太陽、月や星の位置を調べたり、波や風の動きを観察することで進む方角を決めていきます。

ANTENNA ラジオ無線用アンテナ:朝と晩にエスコートボートと連絡を取り合う際にラジオ無線を使います。世界一周航海の太平洋間の航海では、「ホクレア」のシスターカヌーである「ヒキアナリア」がエスコートの役割を果たしました。

RUDDER 舵:100kg以上もある大きなパドルで、クルーが交代で舵を取ります。晴れている日は、太陽、星や月を目印にして舵を取りますが、曇って見えないときは、風やうねりを体で感じて舵取りをします。

▼星を頼りに進む「スターナビゲーション」 星の航海術

スターナビゲーションとは、自然の兆候から方角を読み取る伝統的な航海術です。水平線を羅針盤の外縁、星の動きを目盛りと見立て、星や太陽、波、雲、鳥の動きから進路を導き出します。

スターナビゲーションでは、海上にいる自分がコンパスの中心と考えます。四方に広がる水平線はコンパスの外枠。太陽や星が昇り、また沈んでいく水平線の位置はコンパスの目盛りです。そして、自然界の兆候に、記憶した星の動きを重ねることによって、自分たちが進むべき道を割り出します。ハワイではこれを「スター・コンパス」とも呼び、受け継がれる知識と経験によって航海が成り立っています。

▼ポリネシア航海協会とボランティアの力

ホクレアは、ホノルルに拠点を置くNPO法人「ポリネシア航海協会(PVS)」によって運営されています。1973年に設立された同協会は、ハワイの航海術を継承し、地球環境保護や文化伝承のために世界中で航海を行ってきました。

そして1975年、アメリカ建国200周年記念事業の一環として「ホクレア」を復元。1976年にハワイとタヒチ間の航海に成功して、ハワイアンの先祖たちがポリネシアから漂流してきたという説を覆し、彼らが航路を理解し意図的にたどり着いたことを証明しました。

ホクレアのクルーやスタッフの多くはボランティア。航海の準備、修理、トレーニング、実際の航海まで、すべて自発的な意思と情熱によって支えられ、ホクレア運営費は寄付でまかなわれています。会員費という形の個人による寄付額の下限は10ドル。オンライン決済が可能で、寄付をするとその年のステッカーが送られます。またTシャツ付きの会員費は100ドルから。2022年度はハワイのローカルアーティスト、クリス・ミヤシロによる「ホクレア」を模したグラフィックがデザインされたTシャツとなっています。

そして「ホクレア」というプロジェクトは職業ではなく、そのためクルーも大半の職員もボランティアで成り立っています。ドックに停泊させて修理をしたり、次の航海に向けてトレーニングを行うのも仕事としてではなく、「ホクレア」に関わりたいという自身のため。クルーとなるためのステップも、「プロジェクトのお手伝いをしたい」というスタンスで施設を訪れたことで始まったというスタッフばかりです。さらに、そうしたスタッフにとって「ホクレア」がゴールではないことも特徴です。「ホクレア」と過ごして得た学びを自身の仕事や暮らしに生かし、人生をより豊かにすることを目的としているのです。

▼「ONE OCEAN, ONE PEOPLE, ONE CANOE」

新しいテクノロジーが社会を便利に変え続ける時代に、極めて素朴な構造の船で大海原を渡る「ホクレア」が体現する理念は、「ONE OCEAN, ONE PEOPLE, ONE CANOE」です。肌の色や文化、言語は違えど、私たちは一つの海でつながる一つの民であるという考え方です。寄港地での出会いや儀式の中で、クルーは「違い」よりも「共通点」に気づくと言います。互いを信頼し、協力して海を渡る経験から、人間としての根源的なつながりを体感するのです。

クルーを選出する基準も、民族的なルーツより、一人ひとりが“自分が何者であるのか”を深く理解し、航海の成功のために自身のアイデンティティを持ち寄れる人物像を重視しています。「ホクレア」のために、自分は何ができるか。航海を成功させるために、他のクルーと力を合わせられるか。そうした問いと向き合い、その上で使命感を何より大切に他のクルーと密度の濃い時間を過ごすことで、「ONE OCEAN, ONE PEOPLE, ONE CANOE」という考え方は身体化され、旅先で出会う人には“違い”以上に“共通点”が目に入るようになるのです。

▼ホクレアを支援する理由

ホクレアの存在は、SDGsを基盤としたハワイの「アロハプラスチャレンジ」や「サステナブルツーリズム」とも深く結びついています。環境・文化・教育・平和といった分野への取り組みは、まさにハワイが目指す未来像そのもの。

一連の動きを紐解いていくと、ルーツには1970年代のカルチャールネッサンスがあります。それは「ハワイに自分たちのプライドを取り戻したい」「ハワイの文化をリスペクトして次世代に継承していきたい」という熱い思いを抱いた当時の若者によって起こされたもの。そして、その中心に「ホクレア」がありました。

「ホクレア」関係者は次代を担う若者たちの教育に力を入れ、地道な活動を展開しています。クルーがそれぞれの島でカヌーを軸とした小さなコミュニティを形成し、ハワイ語を話せるようになるためのレクチャーや、海や自然を知る教育プログラムを行なっていったのです。つまり、ホクレアの目的は、航海だけにとどまりません。

自然に敬意を持ち、寄港地で異文化に触れて見識を広め、またその地の子供たちと交流していくことをミッションとする。さらに国連をはじめとする世界的な機関や研究機関、地域コミュニティなどと連携しながら未来の社会づくりに向けた提言や活動を行う。環境教育、平和教育、文化継承、文化交流を含むその取り組みは、ハワイ州が目指す世界観と非常に高い親和性があると考えます。

さらに、「ホクレア」の存在感が社会的にも増していることは、航海のたびに帰港を祝う人々の姿、涙ぐむ住民の表情からも、ホクレアがどれほどハワイの人々にとって大切な存在かがわかります。「ホクレア」は、ハワイの島民に深く愛されているのです。

▼なぜ今また、ホクレアは太平洋を目指すのか?

ホクレアは2025年より新たな太平洋周航「モアナヌイアケア航海」に出発しています。この4年間にわたる壮大な航海では、36の国と島々、100以上の先住民の領域、345以上の港を訪れ、43,000海里を横断する予定です。日本への寄港は2027年に予定されています。

この航海のテーマは「Mālama Honua(地球を慈しむ)」。今こそ、自然への敬意と共生の意識を世界へ伝えるべき時とホクレアは語りかけているのです。

高度なテクノロジーが便利で快適な暮らしを可能にしている現代ですが、社会基盤は太古の昔から変わらず自然の営みによって支えられています。海や自然から遠く離れて暮らしているとその真理を忘れてしまいがちになりますが、社会に持続可能性を備えるためにも、地球を慈しむ気持ちを多くの人が抱き続けることが重要なのです。

本物の伝統航海カヌーや心優しきクルーたちとともに、「We are one people」の神髄に触れられる機会がやってきます。今後の動向にご注目ください。

▼ホクレアの最新情報
ホクレアの詳細や最新航海情報は、allhawaiiの「ホクレア情報サイト」でご確認いただけます。

HOME

特集一覧へ

関連特集

ハワイの伝統航海カヌー「ホクレア」──星と風に導かれ、今もなお大海原を旅する希望の象徴

#サステナブル

家族で楽しむ夏のアクティビティ

#ファミリー #家族旅行 #キッズ

キッズフレンドリーレストラン(オアフ編)

#ファミリー #家族旅行 #キッズ

ハワイに暮らすアーティストのマラマな想い

サステナブルに楽しむハワイ旅が新しい

隣島特集 〜マウイ島〜 海のアクティビティ