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ハワイの森とカヌー その4…

ハワイの森とカヌー その4

2022.02.21

伝統的な素材で作られるカヌー「ハワイロア」の建造前日譚をお伝えする「ハワイの森とカヌー」シリーズ最終回は、ハワイの森の再生の活動をご紹介します。コアの植樹、アラスカ先住民の代表が語った言葉、そして“マラマ・ハワイ”の精神は、わたしたちが地球というカヌーで舵を握り、生きていくうえで大切にすべきことのヒントを与えてくれています。

伝統的な素材で作られるカヌー「ハワイロア」の建造前日譚をお伝えする「ハワイの森とカヌー」シリーズ最終回は、ハワイの森の再生の活動をご紹介します。コアの植樹、アラスカ先住民の代表が語った言葉、そして“マラマ・ハワイ”の精神は、わたしたちが地球というカヌーで舵を握り、生きていくうえで大切にすべきことのヒントを与えてくれています。

ハワイの森の再生へ向けて

アラスカから大木を受け取る前にまず、ハワイの森を再生することから始めたい。

ナイノアたちは、ハワイ島の森にコアの木を植える準備を進めました。

「アラスカに向かう前にする必要のあることが明確になったとき、深い部分からの安堵と解放を感じました。バランスを取り戻すため、ポノ(ハワイ語で「本来の状態」「調和の取れた状態」といった意味)であるためにすることが何か、明らかになりました。」

ナイノアとハワイロア建造プロジェクトのメンバーたちは、数ヶ月間の準備を経て、キラウエアの森でコアの木の植林を行い、森と放牧地との境いで、儀式を行うことになりました。

植林当日、森には、若者から長老まで、様々な分野からの代表が100名ほどが集いました。

アラスカ先住民の代表たちもこの日のために、ハワイを訪れていました。

森の再生を願い集った人々は、一日のほとんどをコアの木の植林に費やした後、祈りを捧げました。

ナイノアは言います。

「アラスカで木を切ることができなかったのは、自然環境に対してよくないことをしていると感じたからです。けれど、本当の理由はもっと深いところにありました。ハワイの自然について思いを馳せる時に感じること、そしてアラスカの自然の中で感じること、その2つに共通点を見い出すことができなかったのです。なぜなら、私たちはバランス感覚を失い、自然とのつながりを失ってしまっていたからです。

ハワイの森を後にする時、痛みを感じたのは、私たちが神聖な場所、コアの森を荒廃させてしまっていたからです。それは単なる環境問題ではなく、とても深い部分からの痛みでした。

コアの木を植えるという行為が、「虐待」から「再生」へのメッセージになることを願っています。それは私たち皆が、心からよいと感じる選択をしていく、ということの象徴でもあります。」

“マラマ”の文化を繋ぐ

森の再生に向けた植林、そしてその後に続いた儀式の終盤、アラスカ先住民の代表が語った言葉を、ナイノアは忘れることができないと言います。

「航海に出るとき、決して怖れないでください。なぜなら私たちがいつも共にあるから。北から風が吹いたなら、その風を通じて、私たちが皆さんと共に航海を共にしていることを思い出してください。」

アラスカの先住民たちは、「ハワイロア」の建造、そしてその航海が何を意味するのか、よく理解していました。それはただ単にカヌーを建造することでもなく、航海術や星について学ぶことだけでもありません。「ハワイロア」は人々を深くつなぐものであり、先人の文化、大地をいたわる文化を祝福するものなのです。

儀式が終わり、人々が帰路につきはじめた頃、夕暮れの光が、植えられたばかりのコアの若木を照らしていました。その時の光景を思い出しながら、ナイノアは言います。

「その若木はあまりにも繊細に見えました。けれどその時、自分たちの手を使って土に触れる子供たちやその子供たちの姿が目に浮かんだんです。その時、若木の示す意味を知りました。それは、大地を癒すことで、私たち自身が癒されるということを示してくれていたんです」

ハワイロアの建造に向け、まずハワイの森にコアの木を植えるというこの取り組みは、1970年代から航海を続けてきたポリネシア航海協会にとって、新たな土台を作ることになりました。ハワイロアの取り組みをきっかけに、ポリネシア航海協会には、“マラマ・ハワイ”(ハワイ語で「ハワイをいたわる」という意味)のプログラムが生まれ、航海を続けていくことの目的に大きな柱がたちました。これをきっかけに、ポリネシア航海協会は、航海と共に、ハワイの島々の自然をいたわり、前向きな変化を生み出す場づくりをはじめていくことになります。

この“マラマ・ハワイ”の精神は、今も受け継がれ、ホクレアの航海、そしてポリネシア航海協会の全てのプログラムの大きな土台となっています。

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