イースト/世界的名シェイパー、トコロのシンプルライフ

2020.03.18

"Kuʻu Home O Kahaluu”(クウ・ホメ・オ・カハルウ)というハワイアンソングを聴いたことがあるだろうか。ジェリー・サントス率いるオロマナの人気ソングで、後にハパを始め、多くのミュージシャンにカバーされた。故郷カハルウへの思いを朗々と歌い上げる名曲だ。

カハルウはオアフ島イーストサイドに位置する1500人足らずの町だ。コバルトブルーに透き通ったカネオヘ湾を見下ろし、切り立ったコオラウ山脈を背に、三角形の小さな島チャイナマンズ・ハットを臨む自然豊かな土地だ。歌のメロディーのように清々しいピュアな空気が町には流れている。

ウェイド・トコロは30年以上も、この小さなビーチタウンで暮らしている。ウェイドの仕事はシェイパーと呼ばれるサーフボード職人。サーフボードを作るためには、多くのクラフトマンがかかわるが、その花形がシェイパーだ。サーフボードの材料であるポリウレタンをサーフボードの形に仕上げる。その腕が、サーフボードの良し悪しや性能を左右するのだ。ウェインはハワイでも指折りのシェイパーで、多くのトッププロサーファーが彼のシェイプしたサーフボードに乗りたがっている。たいていのシェイパーは、サーフショップが多いサウスショアやサーファーが多いノースショアにベースを置くのだが…。
「ここはすごくリラックスできる土地なんだ。コンテストやイベントが頻繁に行われることはないし、島のどここからも離れているからツーリストもあまりこない。だけど、海はすぐ側で、山の景色も壮大で美しい。ちょっとだけ不便だけど、そこがまたいいんだよ」と、穏やかに笑う。

ウェイドの一日は、自宅のラナイから海を眺めることから始まる。うねりや風をチェックして、その日のコンディションを見極めるのだ。そして、自宅でサーフボードのデザインを手がけ、ファクトリーのスタッフにデータをメール。そして、朝5時には波乗りに出かける。サーフィンを満喫したら、夕方までファクトリーでシェイプを行う。それから帰宅して夕食をとり、リラックスしてベッドへ。実にシンプルな暮らしだ。

太陽とともに目覚め、波があればサーフィンを楽しみ、仕事に集中して、一日を終える。サーファーなら憧れるだろうライフスタイルを実現する環境が、ここイーストサイドにはある。有名な観光名所もなくツーリストも素通りしてしまう土地だが、暮らしてみれば、歌にしたくなる魅力に気づくことになるのだろう。

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