ハワイ中の野生動物を保護するハワイ・ワイルドライフ・センター!傷ついた動物たちを癒す驚異のゴッドハンドたち

2022.10.27

ハワイ島のハワイ・ワイルドライフ・センター

ハワイは、ハワイ固有種の植物や動物などの絶滅危惧種が地球上で最も多く、とても脆い生態系の上に成り立っている島々です。自然豊かで癒しのハワイというイメージのなかで、ハワイの固有種は絶滅の危機に瀕していたりすでに絶滅してしまったり、その状況は深刻です。

ハワイ諸島における98種にも及ぶ絶滅危惧種についての回復計画を、アメリカ合衆国魚類野生生物局(United States Fish and Wildlife Service、略称:FWS)は今年発表しましたが、ハワイに生息する絶滅危惧種は、実際のところ、400種類以上にも上っています。しかし絶滅危惧種の動物たちが、外敵や人為的要因のため、日常的に危険にさらされ続け、対策や取り組み、改善が遅々として進んでいないのも現状としてあります。

例えばアラエ・ケオケオ(日本語名:ハワイオオバン)という水鳥や、ハワイの州鳥のネネ(ハワイガン)は、どちらも絶滅危惧種です。ゴルフ場の近くに生息していることもあるのですが、ゴルフボールに当たって負傷したりすることも多いことが問題となっています。

そんな負傷した野生動物たちを見かけたら、どうすればいいのか?

実はハワイ州全土の野生動物、特に鳥類たちを保護し、最先端の獣医学的ケアに加え、野生に戻すためのリハビリテーションを一挙に請け負っている施設があリます。それがハワイ島にあるハワイ・ワイルドライフ・センターです。

2011年に傷病野生鳥獣の保護を目的として施設が設立され、2012年に最初の“患者”が入院してから8年後の2020年には1000匹もの野生動物を保護。なんとその1年後の2021年には2000匹に達しました。

年間の内訳としては、ハワイ島から約80匹、オアフ島から約700匹、そのほかの州から100匹程度となっています。通常、毎日1〜5匹の新患を受け入れていますが、海鳥落下シーズン(seabird fallout season)と呼ばれる11月から12月にかけての満月の頃は、毎日30〜35匹もの急患が運び込まれてきます。

海鳥の雛鳥たちは通常11月頃、満月の明るい夜に飛行訓練をするのですが、満月に向かって飛んでいるつもりが、市街地の灯りを満月と勘違いして窓ガラスにぶつかったり、道路上から動けなくなってしまうそうです。このハワイ・ワイルドライフ・センターはそういった雛鳥たちを救助し、リハビリを通じて野生に戻すなどの活動を一例として、一般からの通報や、パトロールなどで保護した野生動物のトータルケアを行なっています。

傷病野生鳥獣の野生回帰率は88%と脅威の数値を叩き出しており、いかにこの施設の初期治療・ケアが最先端であり、優れているかという実証となっています。野生回帰できなかった残りの12%というのは、すべて24時間以内に回復ができなかった重症の個体だということです。

ということで、ハワイ・ワイルドライフ・センターの教育プログラムの一環でもある、施設ツアーに参加してきました!

ラエ・オカワ(Rae Okawa)さんというコーディネーターの方の案内で、今回は取材ということもあり併設の動物病院内部まで案内していただきました。

ハワイ・ワイルドライフ・センターの入り口には、鳥類の彫刻が展示されています。近くでよく見ると、羽のひとつひとつが本物そっくりに色付けされていて、木で作られたとは思えないほど精巧で、思わず息を呑みます。

これは日本人の内山春雄さんという、日本よりアメリカでその名を知られているバードカービング界の第一人者の作品です。バードカービングとは、鳥の彫刻に染色し、リアルに仕上げる工芸技術。野生のカモを、捕獲する際の囮として使われるデコイが発祥とされています。内山さんはアメリカ本土のバードカービング大会で何度も優勝するなど、野鳥の保護という観点からも欠かせない存在です。なぜなら、絶滅した個体の復元と提示のためには、バードカービングは欠かせない技術だからです。

大変な勢いで絶滅が進む鳥類の研究・啓蒙・教育のために剥製が作られますが、冷蔵保管されている剥製をその啓蒙や教育のために展示した瞬間から、貴重な美しい個体のカラフルな色はどんどん色褪せていきます。しかし絶滅種を未来に繋ぐ研究のためには、剥製は暗い超低温の無菌室で保存しなくてはなりません。わずかに残る貴重な剥製を犠牲にすることなく、研究も教育もどちらも叶えてくれるのが、本物そっくりに作られたバードカービングというわけです。

例えばハワイミツスイ類(ハワイミツスイ亜科:Drepanidinae) はハニークリーパー(honeycreeper)と呼ばれ、新大陸からハワイにやってきた1祖先種から20属50種以上に分化したといわれているハワイ固有の鳥類です。最近まで生存が確認されていた41種のうち、17種がすでに絶滅し、13種が絶滅危惧種として登録されています。

ハワイ固有種の鳥類のなかで最も数が多い種であるアカハワイミツスイ(ハワイ語: アパパネ、ʻApapane)、ミドリハワイミツスイ(ハワイ語: アマキヒ、ʻAmakihi)、そして写真のベニハワイミツスイ(ハワイ語: イイヴィ、ʻIʻiwi)などは比較的安定して生息しているたった3種になります。

このように展示品の数々からも、この施設が啓蒙や教育のために心血を注いでいるかがわかります。子供たちへのエデュケーションプログラムや、ツアーは随時開催されているので、興味のある方は是非問い合わせてみてください。

ハワイ島ガイドのビッグジンさんのYouTubeから、アパパネ・アマキヒ・イイヴィが見られます!

 閑話休題。さてラエさんの案内で早速病院内部へ……。

 保護された傷病野生鳥獣はまず綺麗に洗浄されます。39〜40度の温かいお湯で、水圧は40〜60PSIと厳密に決められており、傷ついた動物たちの最快適が提供されています。現在入院中の傷病野生鳥獣は、16匹おり24時間体制で見守られています。

 この入院患者の中で1番希少価値が高いのが、オペアペア(ʻŌpeʻapeʻa)と呼ばれる絶滅危惧種で、ハワイ諸島に生息する唯一の在来種陸生哺乳類です。

 実は、ハワイ諸島に人が住み着く以前から生息していた固有の哺乳類は、わずか2種。ハワイアンホーリーバット(シモフリアカコウモリの近縁 / オペアペア)とハワイアンモンクアザラシ(モンクアザラシの一種 / イーリオホロイカウアウア)しかいません。

こちらが回復中のオペアペア。ずいぶん元気になって、退院ももうすぐだということでした。

こちらの施設には、唯一“永住権”が与えられている動物がいます。それがハワイ唯一の猛禽類、ハワイ固有種のハワイノスリ(ハワイ語: イオ、'lo)です。タカ目タカ科に分類される鷹で、現在はハワイ島にのみ生息しており、ハワイの貴族・戦士であるアリイの象徴でもあります。“イオラニ”という言葉を聞いたことはありませんか? これは“ロイヤルノスリ”(royal hawk)という意味で、ハワイでは高貴で優雅、かつ勇猛であるものの名称として使用されています。イオラニ宮殿や、イオラニスクールという名門私立校の名前でもあり、また、イオラニはカメハメハ2世とカメハメハ4世の名前でもあります。

そんなハワイの人たちにとって崇拝の対象であるイオも、例外なくこちらの施設に運び込まれてきました。2019年に入院したとき、すでに完全に右目を失明していたイオ。幼鳥はほぼ2ヶ月間巣で育てられますが、その後飛行訓練の際に外敵に襲われ、飛び方を知らないまま、1歳の時点で、餌を取ることもできず弱っていたところを保護されました。

病院スタッフはイオが回復したのち、この野生動物の飼育について大変悩まれたそうですが、今後100%野生に戻ることはできないと判断されたため国へ許可を申請し、ようやく3年後の今年2022年の春にイオの永久飼育が許可されました。すでにイオは4歳になっていました。

ジュアン医師も、その飼育に関して模索していたなかで最終的に「I got a reason why he is here」(彼がここにいる意味を知った)と、イオの良き理解者で、イオから一番信頼されている人間だそうです。野生動物の飼育で1番大事なことは根気強さと愛と仰っていました。休みの日でも、家にいても動物たちのことが気になって、センターに来てしまうと笑います。ちなみに20名程度の登録ボランティアはいるものの、スタッフは少数精鋭の6名。この6名でハワイ全土のレスキューからリハビリまでを行なっているそうで、その使命感と責任感に満ち溢れた笑顔を見ると畏敬の念しか湧いてきません。

こちらはいわゆるキッチン。患者一人ひとりに合わせた餌を日々作っています。

このようにビジターでも施設内のツアーに参加することができるので、ハワイ島に来られた際はカパアウにあるこの施設まで、足を伸ばしてみてください。

ちなみにこちらのギフトショップで売られているハワイ・ワイルドライフ・センターのグッズがどれも可愛くてハワイ土産にピッタリ!なんです。ドネーションも兼ねて、ぜひお手に取ってみてください。私が購入したのはこちらの3点。ヒップパックはウォータープルーフなので、ビーチに行くときに貴重品を身につけておくのにちょうど良いサイズです。

・HWCミニヒップパック($42)
・HWC限定エディションキャップ($26)
・HWCオーナメント($10)

この施設の周りには、風力発電や小さなウポル空港、馬の放牧など見られ、大変牧歌的で素晴らしい光景が広がっているので旅の目的地としても、近年機運が高まっているエデュケーショナル・ツーリズム(教育旅行)の一環としても、オススメな旅の目的地のご紹介でした!

 

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