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ハワイ州グリーンフィー法(Act 96)
制度の概要
ハワイ州は、気候変動対策および自然環境保全を目的とした新たな税制度「グリーンフィー(Green Fee)」を今年新たに導入しました。本制度は、観光によって生じる環境負荷や災害リスクに対応するため、観光産業が州全体で持続可能性を支える仕組みとして位置づけられています。
課税対象
グリーンフィーは、ホテル、コンドミニアム、バケーションレンタルなど短期宿泊施設に課される宿泊税に0.75%が上乗せされる形で徴収されます。2026年1月1日に施行され、州レベルの宿泊税は合計11%となりました。
また、クルーズ船の乗客も新たに課税対象となり、停泊日数に応じた税額が適用されます。
グリーンフィーの目的
グリーン・フィー法は、ハワイのかけがえのない自然環境を守り、将来世代へ引き継いでいくために制定された法律です。気候変動の影響により、海面上昇や海岸侵食、山火事、豪雨などの自然災害が深刻化する中、環境保全や防災対策に安定した財源を確保することが求められていました。そこで導入されたのが、観光による経済的恩恵の一部を環境対策へ還元する仕組みであるグリーン・フィーです。
ハワイは観光産業に支えられている一方で、多くの来訪者を迎えることにより自然環境への負荷も生じています。グリーン・フィーは、観光の恩恵を受ける人々が環境保全にも公平に貢献するという考え方に基づき、集められた資金を環境保護、気候変動対策、防災インフラの強化などに充てることを目的としています。この制度は単なる税負担の増加ではなく、ハワイの自然と地域社会を守り、住民と訪問者の双方が安心してその魅力を享受し続けられる未来を築くための取り組みです。グリーン・フィーは、持続可能な観光と環境保全を両立させるための前向きな政策として位置づけられています。
法案成立までの流れ
グリーン・フィー法は、気候変動による災害リスクや環境劣化が深刻化する中、安定した対策財源を確保する必要性から検討が始まりました。2024年、ジョシュ・グリーン州知事は専門家や地域代表から成る気候アドバイザリーチームを設置し、観光による環境負荷に対応するため、訪問者にも負担を分かち合ってもらう仕組みとして宿泊税を活用する方針を提言。当初は訪問者に向け定額の観光環境負担金も検討されたましたが、合憲性への懸念から、既存税制の引き上げと課税対象拡大という形に修正されました。
議会審議では、観光・宿泊業界を中心に税負担増への反対や、観光競争力低下を懸念する声が上がったものの、将来的な災害被害や復旧コストを考えれば、予防的投資が不可欠であるとの認識が議員間で共有され、法案は上院・下院ともに賛成多数で可決。最終的に2025年5月、知事が法案に署名し、気候変動対策と環境保全を目的とした「グリーン・フィー」は州法として成立し、2026年1月1日、施行されました。
収入の使途と産業への還元
グリーンフィーによる年間約1億ドルといわれる税収は、自然環境の保全、海岸浸食対策、防災インフラ整備、持続可能な観光施策などに充てられる予定です。資金配分については、グリーンフィー・アドバイザリー・カウンシルが提言を行い、透明性のある運用が進められます。すでに、同カウンシルによる施行1年目の提言を受け、2027会計年度に予定されていた環境保全、気候変動・災害耐性、持続可能な観光の各プロジェクトへの一般財源による指定資金は、グリーンフィー収入を用いて賄うことになっています。
資金配分の勧告総額は 1億2,641万ドルで、同カウンシルによるグリーンフィー配分優先分野は、Act 96 に基づき、以下の3つのカテゴリーに配分されます。
- 環境スチュワードシップ(Environmental Stewardship)4,254万ドル
- 気候レジリエンスおよび災害軽減(Climate Resilience and Hazard Mitigation)4,172万ドル
- 持続可能な観光(Sustainable Tourism)4,215万ドル
グリーンフィーは、ハワイの自然と観光を将来にわたって守るための重要な財源として、今後その運用と成果が注目されています。
グリーンフィーの使用用途の提言、カウンシルメンバー詳細などは、グリーンフィー・アドバイザリー・カウンシルのこちらのウェブサイトをご覧ください。
出典:
参考: