クアロアランチのカルチャー・ディレクター紹介

2022.12.15

クアロアの「護り人」としての役割


オアフ島北東部のクアロアランチといえば、乗馬ツアーや映画ロケ地ツアーなど、アクティビティ基地としての印象が強いかもしれません。ですが実はクアロア一帯はオアフ島で指折りのハワイアンの聖地であり、クアロアランチはその文化遺産や自然をあずかる「護り人」のような存在でもあること、ご存知でしょうか?

さまざまな神話が残る神秘の地であり、王族の居住地でもあったクアロアを、1850年、カメハメハ3世より譲り受けたのが3世の相談役だったゲリット・ジャッド氏。後に近隣の土地も加わり、3つの渓谷を擁する広大な土地でクアロアランチを営んできたのが、そのジャッド氏の一族でした。

【上の写真:クアロアランチ提供。空からクアロアを望む】

クアロアのさらなる歴史的重要性は後述するとして、そういったきわめて特殊な土地で各種事業を展開するクアロアランチで、この6月から「ハワイアンカルチャー&地域活動マネージャー」という要職を務めるのが、ジョーイ・カラナキラオカラフイ・パルぺさんです。

「クアロアランチはハワイ古来の価値観を軸に運営されています。ランチの多彩な事業が、ハワイアンの価値観に基づいて進んでいるかどうか。その確認と再構築をするのが私の仕事」とジョーイさん。

新規プログラムの構築に参画したり刊行物の表現をチェックしたり、はたまた文化的におかしなギフトショップの商品を却下したり。業務は多岐にわたりますが、ランチ全般の「文化的なお目付け役、ご意見番」といえば、イメージが伝わりやすいでしょうか。

【上の写真:クアロアランチ提供。ランチがハワイアンの価値観に沿って運営されるよう、確認するのもジョーイさんの仕事】

さらに地域向けの文化イベントやハワイ内外の学生&団体向けプログラムの企画に携わるのも、ジョーイさんの仕事。ランチの従業員400人を対象にしたカルチャークラスも担当しています。

「ようするにカルチャーアドバイザーのような役目ですが、私の仕事にはさらに教育的な要素が加わります」

実際、ジョーイさんはこの6月まで、ハワイアン子息のための名門校「カメハメハスクール」の中等部で教鞭を執っていたというユニークなキャリアの持ち主。以下、ハワイアンカルチャーの専門家であり教育者でもあるジョーイさんの横顔を紹介していきましょう。

クアロアの申し子、ジョーイさんとは?

ジョーイさんはクアロアと近郊のカハルウで生まれ育った生粋のロ―カルボーイ。母方は先祖代々クアロア周辺で暮らし、その祖先は13世紀にタヒチからクアロアにやって来た有名な航海者ラアマイカヒキまで遡るといいますから、まさにクアロアに根づいた一族ということになります。またニュージーランド出身のサモア系の父を持ち、サモアとハワイという2つのポリネシアの血を色濃く受け継いでいます。

ジョーイさんはこの地で子供時代からサーフィン、フィッシング、ダイビングを楽しみながら成長しました。高校からは前述のカメハメハスクールでフラを始め、著名なフラの指導者、カレオ・トリニダッドのフラスクールにも所属。2019年にはフラ界のオリンピック「メリーモナーク・フェスティバル」にも出場し、同スクールの男性部門優勝に貢献しています。

海のスポーツ全般、フラに長け、もちろんハワイ語も堪能なオールマイティなハワイアン男性が、ジョーイさんという人です。

ハワイ大学ではハワイアンスタディ(ハワイ学)を専攻し、卒業後はカメハメハスクール中等部の教員に。そして今年6月、クアロアランチへ。「ずっとクアロアランチで働きたかった」というジョーイさん。自分がその地で生まれ育ったからというのも理由の一つですが、ジョーイさんからは、さらにクアロアを守っていこうという気概のようなものを強く感じます。

クアロアという特別な地に生きる

「ハワイ、特にオアフ島への初期の民族移動の物語や系譜を見ていくと、クアロア周辺の物語がたくさん出てきます。カハイやラアマイカヒキなど、タヒチやマルケサス諸島からの有名な航海者の多くが、この地域を経てハワイに上陸しているのです」

クアロアという土地の特色を、ジョーイさんはそう説明してくれました。ですがジョーイさんが強調するのは過去の豊かな文化遺産だけではなく、もう一つ、未来に視点を向けたクアロアの重要性です。

「クアロアランチという場所は、自然体系を崩すことなく土地を生かしながら管理することを未来の世代に示す、お手本のような役割を担っています。見落とされがちですが、自分にとってクアロアは、そういった意味でも重要な土地なのです」

ハワイ王国時代から、開発の波にのまれることなく、3つの渓谷にまたがる土地を管理してきたクアロアランチ。これは以前の取材で学んだことなのですが、その土地を手つかずの状態で維持することを究極の事業目的に、農業、牧畜、養殖など多角的な業務が営まれているそう。観光業も、そのうちの1つというわけです。

そんなわけで、ランチの多彩なアクティビティのなかでも昨今、注目を集めているのが「土地を守る、世話する」マラマの心を学ぶマラマ体験プログラム。マラマは「慈しむ、大切にする」を意味するハワイ語です。タロイモ畑で実際に作業したり、800年前に造られた養殖池の手入れをしたりと、ハワイの大地とふれあう実地のマラマ体験が、人気を集めているとか。

ハワイの未来を見据えた新プログラムがスタート間近

さらにジョーイさんが日本人旅行者に推奨してくれたのが、1月初旬から始まるコアの木植樹のプログラムでした。これは近年、新たな観光スタイルとして日本でも話題となっている再生型の観光(その地域の文化や資源の再生を意識した観光の形)にも当てはまる、新プログラム。

「ツアーは1グループ4人までなので、プライベート感あふれる体験となるはずです。ガイドと一緒に6人乗り4輪バギー(ラプター)で山間部に入り、コアの木を植えるだけではなく、クアロアランチがハワイの原生林の復元のためどんな活動をしているのかも学べます。マラマ体験プログラムの焦点が『食』なら、コアの植樹プログラムの焦点は『森』ですね」

さらには、「一生切られることのないコアの木を植えるのは、大きなインパクトをハワイに残すことになる」と強調していたジョーイさん。ジョーイさんはこの植樹ツアーのガイドを訓練するだけでなく、時には自身がガイドに同行することも視野に入れながら、ツアーを準備中です。また団体からの需要が急増しているマラマ体験プログラムでも、現在のガイドに加え、ジョーイさん&チームがサポートに入る機会も増えていきそうというから楽しみですね。

クアロアの申し子であり教育者でもあるジョーイさんを迎えたクアロアランチは今後、遊びの要素と教育的&文化的要素を合わせ持つ施設として、住民&旅行者双方の注目を集めていくに違いありません。コア植樹の新プログラムを通じて、「再生型の観光」もぜひ体験してみてください!

なおランチのアクティビティ詳細については、ホームページを参照ください。コアの植樹については近日、英語サイトに登場予定。日本語サイトへの掲載は少し先になりますが、ツアー自体には1月初旬から参加が可能です。

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